ウイルスの神経病原性を細胞のレセプターと反応するウイルスのレセプター結合ドメインの構造から解析することを目的とした。 麻疹では患者1000〜2000人に1人の脳炎が起こるので、モデルとするウイルスに麻疹ウイルスを選んだ。患者から分離以降継代歴が判明している株で、神経病原性をもつ株がないので、1種の非神経病原性株(長畑株:N-V)から幼若ハムスターの脳内感染によって神経病原性株(N-HB)を選択し、この両者についてH蛋白の構造、特にレセプターに結合する部位の構造を遺伝子RNAの塩基配列の解析から明らかにしようとした。 1)SSPEウイルスH遺伝子cDNAプローブの作成 麻疹ウイルスのH遺伝子cDNAライブラリーを作成するために必要となるプローブを先ず作成した。pcDVベクターに組み込まれたSSPEウイルス(山形1株)のH遺伝子cDNA(東大医科研より分与を受けた)をPst IおよびBam HIで切断し、電気泳動後、目的のプラグメントを切り出した。次いで、ランダムプライマー法により^<32>PーdCTPを用いて標識し、H遺伝子のプローブとした。 2)N-HB株とN-V株のH遺伝子cDNAライブラリーの作成 各々のウイルス株を感染させたVero細胞からグアニジウムチオシアネートCsCl法にしたがって全RNAを分離・抽出した。次いで、オリゴd(T)セルロースカラムを用いてmRNAを分離後、各々のウイルス株についてGubler-Hoffmanの方法によってcDNAを合成し、λgt10のEco RI切断部位に組み込み、in vitro packaging後、E.coli C600hfl株を宿主としてλプラークからなるcDNAライブラリーを作成した。 ハイブリダイゼーションの結果、約300個のプラークが陽性に反応したので、今後の解析に充分なcDNAが得られたものと考えている。
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