ウイルスの神経病原性を、麻疹ウイルスをモデルとして、細胞のレセプタ-と反応するウイルスのレセプタ-結合ドメインの構造から解析することを目的とした。 モデルウイルスとして麻疹ウイルスを選んだ理由は、麻疹がWHOの根絶対象疾患であることと麻疹患者1000人に1人の頻度で脳炎を合併するほど麻疹ウイルスの神経病原性が強いためである。 継代歴が判明している麻疹ウイルス長畑株に由来する神経病原性株(NーHB)と非病原性株(NーV)の赤血球凝集素(H)について、ゲノムRNAの塩基配列の比較と単クロ-ン抗体によるエピト-プの解析によって目的を達成しようとした。 1)HのcDNAの作成と塩基配列の決定 昨年度の研究でcDNAライブラリ-を作成していたので、先ずそれの中からHのcDNAを選択し、制限酵素マッピングを行った。現在までのところ、PvuII・SacI・EcoRI・SmaI・XbaI・KnoI・HiadIII・BamHの8種類の制限酵素を用いたマッピングではNーHBとNーVの間での差異を見出すことは出来なかった。2)に記した単クロ-ン抗体による解析で差異を見出しているので、今後、制限酵素フラグメントを用いて塩基配列を決め、ゲノム上の差異を探索していく予定である。 2)Hの対する単クロ-ン抗体の作成とエピト-プの解析 NーHBをBalb/cマウスに免疫することによって、Hに対する単クロ-ン抗体を作成した。現在までのところ、11種の単クロ-ン抗体が得られているが、これらの内、8種がNーHBを特異的に認識し、3種はNーHBとNーVの両方を認識する抗体であることが判明した。 予定より少々研究が遅れ気味であるが、最終年度には目的を達成したいと考えている。
|