研究概要 |
DAFは細胞膜上に正常に存在する70KDの補体系制御因子で、C3変換酵素の解離失活を促進する。一方腎炎患者等ではしばしば、古典経路や第二経路のC3変換酵素に対する自己抗体C4NeFやC3NeFが出現し、これら因子はDAFとは反対にC3変換酵素の解離失活を防ぐ。本年度は、この相反する作用をもつ因子の相互作用について検討した。DAFは、C4NeFで安定化された古典経路のC3およびC5変換酵素には全く作用しなかったが、C3変換酵素の形成に対してはC4NeFが存在していても阻害効果を示した。C3NeFで安定化された第二経路のC3変換酵素に対してもDAFは弱い阻害効果を示したのみであったが、C3変換酵素の形成そのものに対してはC3NeFが存在していても強い阻害効果を示した。すなわち、C4NeFあるいはC3NeFをもつ腎炎患者においても、DAFは補体の作用が自己細胞に波及するのを防いでいることが明らかとなった。 次に、後期補体成分の反応を阻止する細胞膜上の制御因子について検討したところ、可溶化した赤血球膜のクロマトグラフィ-で分子量20KDの制御因子が得られた。本因子は、ノイラミダ-ゼでヒト赤血球を処理してもヒト赤血球がヒト血清補体の作用を受けることがないように働く因子と同一であることが判明した。本因子はヒトC8,C9の作用を抑制するが、モルモットC8,C9の作用には全く影響を与えなかった。これらの補体制御因子としての性質は、70KDとしてすでに報告されているC8結合蛋白あるいはC9結合蛋白と同じであり、今後両因子の異同を明らかにする必要があろう。
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