研究概要 |
昭和63年度は条虫の発育分化に伴う抗原性の変化、特に虫卵の免疫原としての重要性についての実験モデルを用いた基礎研究を試み、以下の成果を得た。 1.H.microstoma感染マウスがH.nanaの攻撃感染に与える影響:1)H.microstoma成熟成虫を宿しているマウスはH.nana虫卵および幼虫からの攻撃感染に対し強い抵抗性を示す。2)H.microstoma幼虫から未成熟幼虫までの寄生を経験したマウスはH.nanaの幼虫による攻撃感染に対してのみ強い抵抗性を示す。3)螢光抗体法による解析から、両種間に発育ステージ特異的な共通抗原が存在する(Int.J.Parasit,印刷中)。 2.H.microstomaの発育.ステージ特異抗原のイムノブロット法(抗原調整は超音波破砕器による)、IFA法による解析:1)1隻の凝嚢尾虫による感染は同種の各発育ステージ抗原に対する抗体応答を惹起するのに十分であり、特に感染後30日以降の血清で抗体応答は強く認められる。2)patent infectionを経験したマウスでは、全ての発育ステージに対する抗体応答が顕著であり、prepaten infectionマウスや虫卵を経口投与されたマウスの抗体応答とは質的に著しい相違が認められた。特に虫卵を経口投与されたマウスが虫卵抗原とのみ強く反応する抗体を産生していた(Parasite Immunology,印刷中)。 3.条虫虫卵の免疫原性:H.microstomaの死虫卵のマウスへの経口投与は生虫卵と異なり抗体応答を惹起しないことがイムノブロット法(抗原調整は超音波破砕器による)、螢光抗体法により判明した。 4.H.microstomaの六鉤幼虫は小腸組織内へ侵入できるか?:虫卵を経口投与されたヌードマウス、正常マウス共に、30分後の小腸組織内に高頻度でH.microstoma六鉤幼虫が浸入しているのが観察された。これは世界で最初の発見である(J.Helminthology,印刷中)。
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