研究概要 |
X線照射により誘発されたマウス胸腺腫細胞よりDNAとRNAを抽出し,TCR各プロ-ブを用いてサザンおよびノザン解析を行い,δ鎖発現からα鎖発現へのスイッチに関与する遺伝子TEAに関する新しい知見をえると共に、マウス胸腺環状DNA解析から,γ鎖,β鎖に関する新しい遺伝子再配列を同定した。 1)マウス胸腺腫はTCR遺伝子発現からみるとき,T細胞分化の中間段階を示した。そのなかには,αβγδの4種を発現するものもあった。 2)δ鎖を発現している胸腺腫細胞中に4J_αの1Kb上流から数10Kb下流のC_αまで転写され、多様なスプライシングをうけた不稔転写物TEAーC_αを同定した。転写開始点の上流にCATとTATAボツクスを同定した。 3)TEAーC_αの発現は胎児期17日目に最高を示した。すなわち,γ鎖発現のあと,α鎖の発現に先立ち,δ鎖と共に発現した。 4)TEA領域の種々の断片をCATベクタ-にクロ-ニングし,DEAEデキストラン法でαβT細胞株に導入し,CAT解析を行い,転写開始点上流2.4Kb断片にサイレンサ-活性を検出した。α鎖遺伝子再配列を活性化するTEAーC_α転写の抑制に関連するものと思われる。 5)異なる染色体上に存在するV_<γ7>とJ_αのトランス組換え産物を環状DNA上に検出した。単にα鎖の多様性の増大のみならず,新しいV_γのα鎖への導入は自己免疫現象との関連で興味深い。 6)β鎖に関して、新にDDシグナル結合を発見し,DD再配列を実証した。VD,DJシグナル結合も含めて、胎児期ではN塩基挿入はみられなかったが、成熟期では20〜25%の割合で挿入がみられた。このことはタ-ミナル・ジオキシリボヌクレオチド・トランスクエラ-ゼの活性を反映するものである。
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