研究概要 |
胎児および成熟マウスの胸腺の細胞を調整し、染色体外の環状DNAを精製し、制限酵素によって断片化し、環状DNAライブラリ-を作製し、T細胞抗原レセプタ-(TCR)再配列遺伝子の欠失組換えの産物を固定した。あわせてT細胞分化の中間段階である胸腺腫細胞におけるTCR遺伝子発現に関する知見をえた。(1)TCRδ鎖のV遺伝子として、新にVδ_7,Vδ_8,Vδ_9の3種を同定した。(2)Jδ_2を用いる再配列は、成熟期胸腺細胞でのみ見られ、脾臓末梢血中にはみられなかった。(3)VδとDδの間に存在し、ヒトのδRecと相同性の高い3つの遺伝子、δRecl,δRec2,δRec3,CδとJαの間に存在するψJαを発見した。(4)2つのDδ間,Dβ間の介在領域の切り出されたシグナル結合を発見した。(5)胎児胸腺ではJσ_1に近いVσ_5,Vσ_6の再配列した産物がえられたが、成熟期胸腺ではJσ_1に遠いVσ_4,Vσ_7の再配列産物がえられた。(6)成熟期胸腺ではVσ_4の方がVσ_7よりも,Jσ_2,Jσ_3の方がJσ_1よりも,Vσ_2の方が擬遺伝子Vσ_3よりも環状DNAへの出現頻度が高い。(7)異った染色体上に存在するVσ_7とJαとのトランス組換えの結果産生される環状DNAを検出した。(8)成熟期胸腺細胞の8鎖とβ鎖のシグナル結合には20〜25%,δ鎖シグナル結合には70%もの高率でN塩基の挿入がみられるが,胎児期胸腺細胞ではみられなかった。(9)δ鎖を発現している胸腺細胞中にψJαの1kb上流から数10kb下流のCαまで転写され,多様なスプライシングをうけた不稔転写物TEAーCαを固定した。(10)種々の発生段階の胸腺細胞についてTEAーCαの発現をしらべたところ,胎児期17日目に最高となった。(11)TEA領域の種々の断片をCATベクタ-にクロ-ニングし,マウスαβT細胞株ELー4に導入し,TEA領域のCAT解析を行い,転写開始点上流2.4kb断片にサイレンサ-活性を検出した。TEA転写はα鎖遺伝子再配列を容易にさせると考えてよい。
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