研究課題/領域番号 |
63480183
|
研究種目 |
一般研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
公衆衛生学
|
研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
山村 行夫 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (40081658)
|
研究分担者 |
高橋 啓子 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助手 (90197137)
山内 博 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (90081661)
|
研究期間 (年度) |
1988 – 1989
|
キーワード | ガリウムヒ素 / トリメチルアルシン / 生物学的モニタリング / メチル化 / 解毒 / ガリウムヒ素半導体 / 銅精錬所 |
研究概要 |
魚貝類由来のヒ素に影響されず、低レベルの無機ヒ素暴露に対応できる尿中ヒ素による生物学的モニタリングの確立、ついで、トリメチルアルシン(TM-As)の毒性学的な解明と大きく二つの研究課題を検討した結果、以下の結論を得た。 第一の課題である、尿中ヒ素による無機ヒ素暴露の生物学的モニタリングについては、尿中ヒ素を化学形態別に測定することにより、従来から最大の懸案とされてきた魚貝類由来のヒ素(主にarsenobetaine)を明確に判定することを可能とし、職業性に暴露されたヒ素を明確に評価できた。なお、評価に際しては無機ヒ素暴露のレベルに対応して、低レベルでは尿中無機ヒ素濃度、そして、高いレベルでは尿中無機ヒ素とその代謝物であるメチル化ヒ素(MA)とジメチル化ヒ素(DMA)の合計値(尿中無機ヒ素+MA+DMA)により、それぞれ明確に判定できることが二つの異なる実験群から確認された。これらの研究成果は、従来の総ヒ素としての評価法に比較して遙かに精度が向上したものと判断した。他方、頭髪中ヒ素の測定は、生物学的モニタリングより作業環境のヒ素汚染の指標に有効であることが示唆された。 第二の課題である、TM-Asの毒性・代謝・排泄に関する研究から、この物質がアルシン類でしることからアルシンと同様に強い毒性を有するものと懸念されたが、しかし、アルシンに比較して溶血性は低く、相対的に毒性の弱いことが判明した。その低毒性の背景には、体内でTM-Asは水溶性のトリメチルアルシンオキサイドに変化する代謝機序が大きく寄与しているものと推定した。電子産業界ではTM-Asの毒性試験の無いままに使用が先行した経緯があるが、アルシンに比較して取扱いは容易であるものと判断された。 メチル化ヒ素化合物の毒性は無機ヒ素に比較して約1/200/1/300程度低く、また、国際的な研究結果を総合すると無機ヒ素のメチル化は解毒機序であると結論される状況に至っている。今回の研究結果から、アルシンも無機ヒ素と同様にメチル化態は大きく毒性が軽減されることが明らかとなった。
|