研究概要 |
大阪府下に在住する青壮年期の双生児に調査協力を求め170組より新たに協力を得た。かねてから協力を得ている中高年齢双生児910組と合わせて、これら計1080組について郵送健康質問紙調査を実施した。またこのうち自主的に総合検診を希望するもの計144組について、B型肝炎ウイルス抗原(HBs,e)・抗体(HBs,e,c)の測定、肝機能検査(γーGTP・GOT・GPT等)、その他各種臨床検査の総合的検診および生活環境調査を実施した。これら調査検診デ-タを双生児研究法独自の解析手法および当教室にて新たに考察した推計手法にて解析し以下の成績を得た。 【結果】 1)HBc抗体価をB型肝炎既往の指標とみなした場合、受検した双生児の感染既往率は37.5%で感染様式別には母児感染既往率が18.3%、水平感染既往率(全受検例に対する率)が19.2%であった。卵性別には著しい差はなかった。性別では、男で水平感染率がやや高値を示した。2)出生年別に感染既往率を比較すると、1920年代に出生したものが既往率49.1%と最も高く、1910年代以前の群では38.3%、1930年代に出生したもの37.8%、1940〜50年代に出生したものも25.0%と数値が低下した。また母児感染既往率については1910年代以前の出生群では7.4%と低値であったが、1920年代の出生群は19.1%、1930年代の出生群では20.7%と上昇する傾向がみられた。この成績は、我が国のB型肝炎ウイルスが現在の高齢者の世代に一せいに蔓延し、その感染者が次世代に母児感染させたことが示唆される。3)肝機能検査のうち特に目立ったのは、GPTの高値がペアの双方感染群に多くみられたことである。GPTの値が36IU/L以上のものの割合で比較すると双方陽性例では37.5%が含まれたが片方のみ陽性例では21.9%であった。母児感染者の予後を示唆するものとして注目されよう。
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