研究概要 |
(目的)昨年の研究では、酢酸ウラニウム誘発急性腎不全における乏尿性(OARF)および非乏尿性(NOARF)の発症機序の差異に糸球体濾過面積減少が関与している可能性は少なく、尿細管壊死に伴う逆拡散の強弱の関与が大きいことを報告した。本年は虚血性急性腎不全のOARFおよびNOARFを作製し、昨年同様、血行動態、走査電顕における糸球体濾過面積、光顕像につき両群に差があるか否かを検討した。(方法)体重250-350gのSDラットを用い、左腎動脈を60分間完全阻血してOARFを、右腎摘後に同様の完全阻血を行いNOARFを作製し、2日後に以下の実験を施行した。対照として、OARF群は無処置ラットを、NOARF群は右腎摘ラットを用いた。イヌリンクリアランス(Cin)を測定後、左腎を灌流固定し光顕像を観察すると共に、糸球体を単離して上皮、内皮側を走査電顕(日立S-800)にて観察した。写真撮影後、画像解析装置にて1)幅1μm以下の足突起占有面積(%CS,×4000)、2)終末足突起間隙占有面積(%IS,×60000)、3)内皮小孔密度(ED)、4)内皮小孔長径(ES)につき、形態的半定量化を行った。(結果)尿量は無処置群2.80μl/min、右腎摘群4.67μl/minに比しOARF群0.42μl/min、NOARF群13.4μl/minと各々、乏尿および非乏尿が惹起された。Cinは無処置群1.49ml/min/Kidney、右腎摘群2.11ml/min/Kidney、OARF群0.076ml/min/Kidney、NOARF群0.51ml/min/Kidneyと、NOARF郡がOARF群に比して有意に高かった。また平均血圧はOARF群がNOARF群より有意に上昇していた。形態的には、両群共に%CS、%IS、ED、ESは各々の対照群に比し有意に減少していた。EDはNOARF群に比しOARF群の減少度は大であったが、他は両群間に減少度の差が認められなかった。光顕上は、OARF群はNOARF群に比し尿細管円柱が皮質、髄質外層外帯で多くみられ、尿細管壊死も皮質、髄質外層に強く認めた。(結論)1)内皮小孔密度はNOARF群に比しOARF群で減少度は大であったが、足突起の融合、間隙や内皮小孔長径には両群間で形態変化の差はなかった。2)OARF群ではNOARF群に比し尿細管円柱、壊死が強くみられた。3)本モデルでのOARFとNOARFのCin差に糸球体濾過面積減少が関与している可能性は少ないが、逆拡散の関与の可能性は残された。
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