研究概要 |
(目的)急性腎不全には乏尿性(OARF)および非乏尿性(NOARF)のタイプがあるが、両者の発症機序の差異は明らかでない。今回、腎毒性および虚血性急性腎不全モデルのOARFおよびNOARFを作成し両者の発生機序の差異につき検討した。(方法)1)酢酸ウラニウム(UA)誘発急性腎不全:2.4-3.4kgの家兎各5羽にUA2mg/kgおよび0.9mg/kgを静注し、非投与家兎を対照として3日後にクリアランス、形態学的検討を行った。2)虚血性急性腎不全:250-350gのSDラット各5匹に右腎摘または偽手術施行後に左腎動脈を60分間完全阻血し、右腎摘または偽手術のみのラットを対照として2日後にクリアランス、組織学的検討を行った。検討項目として潅流固定後の光顕像および単離糸球体の上皮、内皮側の走査電顕像を観察し、1)幅1μm以下の足突起占有面積(%CS,×4000)、2)終末足突起占有面積(%IS,×60000)、3)内皮小孔密度(ED,×30000)、4)内皮小孔長径(ES)、5)壊死尿細管数、円柱数(×400)につき半定量化を行い、両者の比較検討を行った。(結果)1)UA誘発急性腎不全:UA2mg/kgおよび0.9mg/kg投与により各々OARF、NOARFが惹起された。血圧、腎血流量はNOARF群に比しOARF群で有意に高く、C_Nは両群共に対照群に比し低値であったがOARF群はNOARF群に対しても有意に低値であった。組織学的には%CSのみOARF群に比しNOARF群の減少度は軽度であったが、%IS、ED、ESは両群間に差はなかった。また、尿細管円柱数は両群に差は無かったが、尿細管壊死数は髄質外層外帯において有意にOARF群に多く認められた。2)虚血性急性腎不全:前処置として右腎摘および偽手術されたラットは左腎動脈60分間完全阻血後、各々NOARF、OARFが惹起された。両群共にC_Nは各々の対照群に比し有意に低下したが、OARF群の方がNOARF群に比し低下度は大であった。組織学的には、EDのみOARF群に比しNOARF群で減少度が小さかったが、%CS、%IS、ESは両群間に差は無かった。一方、尿細管円柱数、壊死数はOARF群に有意に多く認められた。(結論)両急性腎不全モデルの検討より、OARFとNOARFの尿量およびC_N差に糸球体濾過面積の差が関与する可能性は少ない。一方、尿細管壊死部を介する逆拡散の差が関与する可能性は残される。
|