肝在住マクロファージであるKupffer細胞にて産生・放出される各種メディエーターの種類およびその産生条件を、分離・培養Kupffer細胞を用いて検討するとともに、このメディエーターを介した他細胞との細胞間相互作用について研究した。Kupffer細胞は、プロスタグランディンE_2(PGE_2)の産生系を有しており、このPGE_2産生機能はエンドトキシン血症血清を添加した場合に有意に増強させることが可能であった。このPGE_2を含むKupffer細胞培養上清は、培養系での実験的肝細胞壊死誘導を抑制した。このことより、エンドトキシン血症を伴う肝障害時、Kupffer細胞は細胞保護的にも作用することが明らかとなった。またKupffer細胞によるコラゲナーゼの産生は、培養液中に微量のコラーゲンを添加した条件下が最も亢進した。実験的にコラーゲンを産生した培養肝細胞とKupffer細胞とをco-cultureしてみると、きわめて短時間でコラーゲンは溶解消失した。このことは、肝繊維化進展においてKupffer細胞がfibrolysisの機構としても重要な働きをしていることを示唆していた。さらに培養Kupffer細胞を各種物質にて刺激するとTNFの産生させることが可能であったが、この刺激物質としてはbiolgical response modifier(BRM)が最も効果的であった。しかし、このTNF産生能は脾マクロファージよりは劣っていた。また、培養Kupffer細胞をBRMで刺激すると極めて効果的にインターロイキン1(IL-1)を産生したが、このIL-1は肝関連natural killer細胞(pit細胞)の増殖・分化に密接に関係していることが推測された。以上のことより、Kuffer細胞は各種サイトカインを産生し得ることが証明され、肝病態の発生・進展に重要な関わりを有していることを明らかにすることができた。今後、サイトカインを介した肝類洞壁細胞間の相互作用についても検討する予定である。
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