研究概要 |
ニュ-モシスチス・カリニ(以下、カリニと略す)肺炎は後天性免疫不全症候群(AIDS)などに併発しやすいことから、診断や検査法の確立が期待されている。カリニの培養法による増殖が困難であるために、研究の材料を得るために遺伝子工学の技術を応用してカリニ蛋白質の量産系の開発を進めてきた。その研究成果をここにまとめて報告する。i)標的蛋白物質の解析:カリニ膜蛋白質(GP115)は主要成分であり、抗原性も高いことから、この蛋白物質を標的物質に定めた。この物質のN末端はブロックされていたが、ペプタイドを分析して、いくつかの部分からアミノ酸配列が決定できた。その知見をもとにプロ-ブを試作した。ii)カリニ遺伝子組み換え体の作成:制限酵素で切断した20kbpのDNAをEMBL3のベクタ-に組み換えてジェノムライブラリ-を作成した(10^8PFU/ml)。また、カリニからRNAを抽出し、λgt11に組み換えたcDNAライブラリ-も作成した(10^5PFU/ml)。iii)カリニ遺伝子のスクリ-ニング:サザンブロットにより試作したプロ-ブを順次検定して、当りの塩基配列を含むプロ-ブを選定することができた。これを用いて、サザンて反応する部位の遺伝子を切り出してpUCベクタ-に組み込み、サブクロ-ニングを行った。3,000個のコロニ-を調べ、数個の反応するコロニ-を単離できた。これらの組み込み体の制限酵素マップを現在調べており、シ-クエンスを行って、目指す遺伝子配列を決定したい。 関連研究成果i)カリニの遺伝子からみた進化系統樹の位置づけ:カリニの分類学上の位置が不定であったため、5Sリボゾ-ムRNAの塩基配列を調べ、protista fungi群に属することを明らかにした。ii)ヒト感染肺とのDNA診断:ヒトのカリニ肺炎患者を対象にしてDNA診断を行うことに初めて成功した。また、ヒト由来のカリニ間で、異種性が確認できたため、多種類の株が存在していることを明らかにした。
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