サルコイド-シスと過敏性肺炎の発症メカニズムの解明を目的として本研究を実施した。サルコイド-シスと過敏性肺炎は肺内病巣部にT細胞の集積をきたす疾患であり、これらのT細胞の活性化が疾患の病勢に強く関与している。過敏性肺炎については原因抗原が明らかとされ、吸入抗原による経気道的感作が発症に結びつくものと考えられるが、サルコイド-シスについてはその原因がまったく不明である。近年気管支肺胞洗滌(BAL)が広くびまん性間質性肺疾患の病態解明のために応用されている。BALは、末梢気道、肺胞の病変部から細胞成分や液性成分を採取して検査する方法であるが、それによって得られる細胞成分は開胸肺生検で得られる組織病変と密接に相関することが知られている。すなわち、BALによって得られる細胞成分を分析することによって肺内の細胞現象を推測することが可能である。ところでT細胞の分化増殖過程にはその細胞表面上へのインタ-ロイオン2(ILー2)受容体の発現とILー2の産生が必須である。またTリンパ球のクロ-ン特異性はT細胞抗原受容体によって決定される。そこで我々は、サ症、HP患者のBALによって得られたリンパ球と末梢血のリンパ球よりRNAを抽出しILー2およびILー2RのmRNAをこれらのリンパ球が発現しているが否かをノ-ザンブロット解析にて検討し、同時にこれらのリンパ球のILー2産生能、ILー2R表面マ-カ-、BAL液、血清中可溶型ILー2Rも測定検討した。さらに、リンパ球よりDNAを抽出し、T細胞抗原受容体β鎖のプロ-ブを用い、抗原変容体特異性もあわせて検討した。その結果、サルコイド-シス、過敏性肺炎の慢満リンパ球は細胞レベルでも、遺伝子レベルでも活性化されていることが判明した。Tリンパ球の抗原特異性については、現得も研究が進行中である。
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