心筋障害における心筋細胞膜情報伝達系とPIレスポンスに関する研究

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 63480220
• 研究機関: 北海道大学
• 研究代表者: 川口 秀明 北海道大学, 医学部附属病院, 助手 (70161297)
• キーワード: 細胞内カルシュウム / IP4 / IP3 / ホスフォリパ-ゼC / 細胞膜情報伝達系

研究概要

本研究の目的は、心筋肥大発生機序を解明するために、α受容体、G蛋白およびPI代謝を介した情報伝達制御機構を肥大心筋にて検討することにある。〔方法〕雄性Wisterラット心室筋を50mMTris/HCI(pH7.4)でホモジナイズし、遠心法によってmitochondria、microsome、cytosolを得た。PI-PLCおよびPIP_2-PLC活性は、基質としてそれぞれ〔^<14>C〕PIまたは〔^<3H>〕PIP_2を用い、37℃、5分インキュベ-トした。Dowex AG1X-8を用いてIP_7、IP_3の放射活性を測定した。WKYおよびSHRのPLC活性比較は、20週齢のcytosolを用いた。IP_3キナ-ゼ活性の測定に〔^3H〕myo-IP_3(1.2mol)を用い、10mM ATP、5mMDPG、20mMMgcl^2、0.05MTris-malate(pH7.4)、Enzymeと37℃20分間インキュベションした。これを、AGI-(×8)カラムを用いIP3とIP4を分離した。IP4フォスファタ-ゼは〔^3H〕IP4を基質とし各細胞分画と10分間インキュベ-ション後同様なカラムにてIP1-4を分離した。〔結果〕PI-PLC活性は主としてcytosolに存在したが、PIP_2-PLC活性はcyto-solのほかに、膜分画においてもみられた。PI-PLC活性は最大活性発現に5mMの非生理的高濃度のCaを必要としたが、これに対し、PLP_2-PLCが9.0であった。PI-PLC活性は0.1%コ-ル酸によって活性は上昇したが、至適pHに変化はなかった。これに対して、PIP-PLCは0.1%コ-ル酸によって活性は上昇したが、至適pHは9.0から5.0へ変化した。この二つのPLCはFPLCカラムによって分離された。IP3キナ-ゼの細胞内局在性は主にcytosolに認められた。至適pHは7.4と9.5であり、6.5以下ではほとんど活性はみられなかった。またMgイオン、ATPの濃度依存性に活性は上昇した。Caイオンに対しては1μMで活性が上昇した。IP4フォスファタ-ゼもsytosolに活性が存在しpHは7.0であり、Mgイオンにより活性が抑制された。

研究成果

• [文献書誌] Satoshi Fuji: "Fatty acid binding protein of cardiac muscle in the spontaneously nypentensive rat:effect of hypertrophy and its regression" Journal of Molecular and Cellular Cardiology. 20. 779-787 (1988)
• [文献書誌] Hideaki Kawaguchi: "Effect of various plasminogen activator on prostacyclin synthesis incultured vascular cells" Circulation Research. 63. 1029-1035 (1988)
• [文献書誌] Hiroshi Okamoto: "Lipids alterations in renal membrane of stroke-prone spontaneously hypertensive rats" Hypertension. 13. 456-462 (1989)
• [文献書誌] Kihito Takahashi: "The hypertensive response to vasopressor agents atimulates the release of thromboxane A2 in hypercholesterolaemic rabbits" Cardiovascular Research. 23. 788-796 (1989)
• [文献書誌] Hideaki Kawaguchi: "Effect of atrial natriuretic factor on angiotensin converting enzyme" J Molecular Cellular cardiology. 21. 956-961 (1989)
• [文献書誌] Hideaki Kawaguchi: "Platelet-activating factor stimulates angiotensin convertingenzyme activity" J Hypertension.
• [文献書誌] M.Fujiwara: "Activity of inositol 1.4.5-trisphosphate kinase(IP3 kinase)in rat heart Biosignalling in cardiac and vascular systems" Pergamon press, 4 (1989)
• [文献書誌] 川口秀明: "特発性心筋症'89先端科学・技術開発年鑑" 技術出版, 4 (1989)