研究概要 |
マクロファ-ジ由来泡沫細胞は、動脈硬化初期病変の重要な一因子である。高比重リポ蛋白(HDL)の泡沫細胞に対する作用は、その抗動脈硬化作用の機構を解明する意味で注目されている。マクロファ-ジ由来泡沫細胞は従来マウス腹腔マクロファ-ジを用いて検討されることが多かったが、今回は実験的動脈硬化モデルとして常用される家兎の腹腔マクロファ-ジの成績と比較し、種差の面からHDLの作用を検討した。(方法)雄性DDY系マウス(M)、雄性日本白色種家兎(JR)、雄性ニュ-ジ-ランド白色種家兎(NR)を用い、各々の腹腔マクロファ-ジをアセトアセチルLDL(aLDL)、酸化LDL(oLDL)またはBVLDLと24時間培養し、泡沫細胞を作成した。これにヒトまたは家兎由来のHDLを加え、24時間後の細胞内総コレステロ-ル(TC)及び遊離コレステロ-ル(FC)をHeider法にて測定した。エステル型コレステロ-ル(EC)はTC-FCとして求めた。(結果)(1)各リポ蛋白(aLDL,oLDL,BVLDL)によるマクロファ-ジの泡沫化には有意な種差は認められなかった(各リポ蛋白添加によるTC,ECの増加度に有意差はなかった)。(2)HDL添加によりMは約60%,JR,NRでは約30%TCが減少した。FCには有意は減少は認められなかった。(3)HDLの作用はヒト由来のものと家兎由来のもので有意な差は認めなかった。(結論)マクロファ-ジ由来泡沫細胞からのHDLによるコレステロ-ル引き抜き現象にはマウスと家兎の間で種差が認められ、動物種による易動脈硬化発症性の観点から興味ある知見を得たが、現在さらに、高脂肪食負荷家兎のマクロファ-ジについて検討中である。
|