研究課題/領域番号 |
63480227
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
多田 道彦 大阪大学, 医学部, 教授 (90093434)
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研究分担者 |
星田 四朗 大阪大学, 医学部附属病院, 医員
門馬 正明 大阪大学, 医学部附属病院, 医員
葛谷 恒彦 大阪大学, 医学部, 助手 (80150340)
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キーワード | 再灌流心筋障害 / 活性酸素 / アラキドン酸リポキシゲナーゼ代謝 / 電子スピン共鳴法 / 化学発光法 |
研究概要 |
本研究は、単離培養心筋細胞の低酸素ー再酸素化モデルを用いて、再灌流心筋障害の進展におけるアラキドン酸リポキシゲナーゼ代謝並びにこれと密接な関連を有する活性酸素の役割を検討した。低酸素(45分)条件下から急激に再酸素化を行うと、心筋細胞は長桿状から円形へと変形するが、円形細胞の出現率並びにCK遊出量は再酸素化初期では低酸素持続条件下よりもむしろ増大し(再酸素化細胞障害)、再酸素化5時間後には各々74.5%、92.4mIU/mg proteinに達した。この際、細胞障害の進展に先行してリポキシゲナーゼ代謝物質ヒドロキシ酸(HETE)は著明に亢進し、再酸素化5時間後には、5ーHETE13.4ng/mg protein、12-HETE26.8ng/mg proteinのプラトーに達した。再酸素化後、円形細胞の出現率と総HETE産生量との間にr=0.89(P<001)の正相関が認められた。かかる条件下での活性酸素生成をスピントラップ剤による電子スピン共鳴法を用いて測定すると、再酸素化直後並びに細胞障害の進展過程である1ー3時間後にその産生亢進が認められた。同時に、蛍光物質ルミノール添加による化学発光量(ケミルミネッセンス)を微弱発光測定装置で計測すると、再酸素化1ー3時間後に著明な産生ピークがみられた。リポキシゲナーゼ代謝阻害剤nordinydroguaiaretic acid(10μM)を再酸素化時に投与すると、HETE産生の低下並びに化学発光量の著明な減少と共に円形細胞出現率の低下も認められた。従来より、虚血心筋組織でアラキドン酸等の不飽和脂防酸が遊離されること、HETE産生が亢進していることが知られている。今回の結果は、(1)虚血心筋組織のHETE産生が心筋細胞自身に由来する可能性のあること、(2)リポキシゲナーゼ代謝亢進が活性酸素生成と関連して、低酸素・再酸素化心筋細胞障害の進展に密接に関わっていることを示唆している。
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