研究課題/領域番号 |
63480229
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
武田 裕 大阪大学, 医学部附属病院医療情報部, 助教授 (20127252)
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研究分担者 |
松山 泰三 大阪大学, 医学部附属病院, 医員
佐藤 秀幸 大阪大学, 医学部附属病院, 医員
石田 良雄 大阪大学, 健康体育部, 助手 (80144533)
北畠 顕 大阪大学, 医学部, 講師 (00124769)
井上 通敏 大阪大学, 医学部附属病院医療情報部, 教授 (30028401)
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キーワード | 心不全 / β遮断薬 / 左室拡張期特性 / カルシウム過負荷 |
研究概要 |
本研究の目的は不全心の進展、増悪因子として運動などのストレス時の交感神経興奮の意義と機序を明らかにすることである。昨年度は運動により交感神経活動を亢進させた場合、慢性心不全患者(拡張型心筋症)では運動時の拡張期圧ー容積曲線が上方へ偏位し、この偏位はpropranololにより抑制されたのに対し、対照群では運動時の拡張期圧ー容積曲線は上方へ偏位せず、安静時の曲線上を推移し、propranolol投与後も変化を認めないことを明らかにした。このことは慢性心不全患者では運動時の交感神経興奮によるβ受容体刺激が不全心筋の増悪因子として働いていることを強く示唆する結果であった。不全心において交感神経興奮が拡張期圧ー容積曲線の上方への偏位をもたらす機序として、虚血性あるいは非虚血性のカルシウム過負荷が考えられる。そこで本年度は運動時の交感神経興奮が不全心においてカルシウム過負荷を生じる機序を明らかにする目的で、正常冠動脈を有する慢性心不全患者を対象に安静時および運動時の心電図ST変化と拡張期左室圧ー容積関係を解析し、運動時のカルシウム過負荷が心筋虚血に起因するのか否かを検討した。その結果、1)全例において運動時に拡張期圧ー容積曲線が上方へ偏位し、その結果、左室拡張末期圧が上昇した。2)安静時から運動時へのST低下分(ΔST)と拡張末期圧の増加分(ΔEDP)の間には有意な相関関係を認めなかった(r=0.44)。以上の結果より、慢性心不全患者において認められた運動時の拡張期圧ー容積曲線の上方への偏位、すなわちカルシウム過負荷を生じる機序として、心筋虚血は重要な役割を果たしていないことが明らかになった。したがって運動時の交感神経興奮が心拍数を増加し、拡張期が短縮するために増加したカルシウムトランジェントを処理できず、その結果、カルシウム過負荷が生じるという細胞内代謝異常が不全心の増悪因子として重要であることが示唆された。
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