冠動脈の内膜をバル-ンカテ-テルで機械的に剥離すると、数か月後にヒスタミンやセロトニンといったオ-タコイドに対し内膜肥厚の局在する血管壁が過剰に狭窄することを明らかにした。本研究ではこの様な過剰収縮の閾値を決める要因、即ち攣縮の活性化機序を解析した。 1.X線の冠動脈限局照射による血管壁の反応性亢進:X線照射の影響を、(1)高コレステロ-ル血症ミニ豚の冠動脈を機械的に剥離、(2)低コレステロ-ル血症ミニ豚の冠動脈内膜剥離、(3)低コレステロ-ル血症ミニ豚、内膜非剥離の3群について検討した。何れの群も、X線照射後にセロトニンに対する血管反応性亢進を認めた。非照射部では収縮反応性の亢進は生じなかった。セロトニンによる過剰狭窄はケタンセリンやメッセルガイドの前処置で抑制されたが、α遮断剤は抑制しなかった。X線照射はエルゴノビンによる狭窄反応も促進した。最大効果は内腔の狭窄率で照射部56%、非照射部24%であり、照射部の過剰反応はケタンセリンの前処置で抑制された。摘出血管標本の実験によってエルゴノビンの過剰収縮は内皮細胞依存性弛緩作用の減弱と中膜平滑筋の収縮亢進によることが明らかになった。 2.アルカロ-シスによる活性化現象の顕在化:ミニ豚の冠動脈に限局性にX線を照射すると、機械的内膜剥離を行わない場合でも照射部はセロトニンによって有意に強く狭窄した(45±2%VS26±3%;p<0.01)。過換気(pH7.66±0.22)やメイロンの静注(pH7.67±0.01;100mEq)によってアルカロ-シスにするとセロトニン(10μg/kgic)による冠狭窄率は76%と有意の亢進を示した。正常pHで高酸素血症(pO_2134±14VS94±7mmHg)下では過剰収縮現象を認めなかった。すなわち、アルカロ-シスはセロトニンに対する過剰収縮反応を顕在化する効果があると考えられる。
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