免疫異常の発症機序に関してリンパ球の分化過程・免疫制御機構の面から検討した。T細胞には抗原レセプタ-がαβ型のものとγδ型のものとが存在する。後者は健康人では少なく、胸腺依存性が低く、より原始的なものとされている。原発性免疫不全症患者で後者の増加をみるものがあり、前者の減少を代償するものと予想されたが、その細胞傷害性機能には一部欠陥があり、γδ型についても完全な分化はえられていないと考えられた。リンパ球幹細胞の発生障害によると考えられるT細胞欠損症例に骨髄移植を行ったところNK細胞の発生をみたが、T細胞は出現せず、さらに胸腺移植を加えることで発生した。増加したNK細胞には顆粒球生成抑制作用があり、T細胞の出現に伴うNK細胞の減少により顆粒球生成が回復した。このことは顆粒球ーNK細胞ーT細胞相互間にそれぞれの発生を制御する機構が存在することを示唆している。胸腺移植により出現したT細胞のうちγδ型についてはインタ-ロイキン(IL)ー2によく反応したが、αβ型には欠陥があり、両者の成熟に胸腺依存性の差があることが示された。CD4^+T細胞はB細胞の分化を補助するが、CD45RA^+のものがより成熟型のCD45RO^+のものに分化するとされる。免疫グロブリン産生不全の症例でその分化がみられないものがあり、このヘルパ-T細胞の成熟障害が抗体産生不全の成因と予想された。小児の年齢を追って調べると卵白に対する抗体の出現に先立って当抗原に対するレセプタ-をもつB細胞の増加があり、それはアレルギ-患者で著しかった。そのようなB細胞が健康人にも存在することはその制御機構の欠陥が発症に結びつくことを予想させる。慢性甲状腺炎患者リンパ球には、抗サイログロブリン産生中のもの、抗原とT細胞の存在下に当抗体を産生するものなどがあり、病態に差があることが示された。異常がB細胞レベル、ヘルパ-T細胞レベル、サプレッサ-T細胞レベルのものがあると思われる。
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