糖尿病性合併症の早期病態の解明とその予防に関する基礎的・臨床的研究

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 63480235
• 研究機関: 山梨医科大学
• 研究代表者: 加藤 精彦 山梨医科大学, 医学部, 教授 (80051069)
• 研究分担者: 辻本 愛子 山梨医科大学, 医学部, 医員 ; 東田 耕輔 山梨医科大学, 医学部, 助手 (60173142) ; 朝山 光太郎 山梨医科大学, 医学部, 助手 (70129310) ; 雨宮 伸 山梨医科大学, 医学部, 講師 (10118903)
• キーワード: 糖尿病 / 小児 / 合併症 / 腎症 / フリ-ラジカル / 過酸化脂質 / スカベンジャ- / レニン・アンギオテシン系

研究概要

1.IDDM患児の早期腎合併症を評価するために、尿中微量アルブミン、糸球体濾過率、種々の物質の腎排泄率、レニンアンギオテンシン系、ド-パミンなどの臨床生化学的指標を詳細に検討した。IDDM患児においては、レニンの活性化が悪い症例がいることが明らかになった。また、アンギオテンシン変換素阻害剤の投与下、非投与下におけるこれらの指標の変動を明らかにすることにより、IDDM患児における腎症の初期からの予防に役立つ有益な情報が得られた。
2.IDDM患児のリポ蛋白を、過酸化脂質、高比重リポ蛋白細分画コレステロ-ル等を含めて検討し、インスリン投与によって血糖コントロ-ルを受けている患児においては高脂血症は認められないが、リポ蛋白組成の異常を反映すると考えられるアポリポ蛋白とコレステロ-ルの比率の異常が認められることが解った。また、過酸化脂質については、高比重リポ蛋白中のものは、むしろ腎機能の保存の係わる臨床生化学的指標と考えられたのに対して、血清中のそれ以外のポリ蛋白分画に存在する過酸化脂質は、尿細管機能障害と関係があることが示され、前年度までに、動物実験で明らかにした事実を裏付ける成績であった。
3.糖尿病ラット腎においては、免疫組織化学染色法による二つのス-パ-オキシドジスムタ-ゼ(SOD)の局在が、正常とは明らかに異なっており、特に尿細管病変の成因に酸素障害が関与していることを示唆する成績が得られた。また、糸球体においてはSODの含有量が少ないことが明らかになり、糸球体障害機構における酸素障害の関与に関しては、今後とも重要な研究領域であると考えられる。

研究成果

• [文献書誌] Amemiya S,Ishihara T,Higashida K,Kato K.: "Approch to earlyーstage nephropathy in childhoodーonset insulinーdependent diabetics." Acta pediatr Jpn. 30(suppl). 28-34 (1988)
• [文献書誌] Asayama K,Dobashi K,Hayashibe H,Miyao A,Amemiya S,Kato K.: "Lipid peroxide and antioxidant enzymes in human and rat diabetes mellitus." Acta pediatr Jpn. 30(suppl). 188-190 (1988)
• [文献書誌] Asayama K,Hayashibe H,Dobashi K,Niitsu T,Miyao A,Kato K.: "Antioxidant enzyme status and lipid peroxidation in various tissues of diabetic and starved rats." Diabetes Res.12(2). 85-91 (1989)
• [文献書誌] Dobashi K,Asayama K,Kato K,Kobayashi M,Kawaoi A.: "Immunohistochemical localization of copperーzinc and manganese superoxide dismutases in rat tissues." Acta Histochem Cytochem. 22. 351-356 (1989)
• [文献書誌] Asayama K,Miyao A,Kato K.: "Highーdensity lipoprotein(HDL),HDL2 and HDL3 cholesterol concentrations determined in serum of newborns,infants,children,adolescents and adults by use of a micromethod for combined precipitation,ultraーcentrifugation." Clin Chem. 36(1). 129-131 (1990)
• [文献書誌] Amemiya S,Ishihara T,Higashida K,Kusano K,Ohyama K,Kato K.: "Altered synthesis of renin in patients with insulinーdependent diabetes;plasma protenin as a marker predicting the evolution of nephropathy." Diabetes Res Clin Practice. 10(1). 115-122 (1990)