研究概要 |
原発性好中球減少症35例、糖原病Ib型1例、再生不良性貧血7例についき、好中球減少の病因・病態を解析し、造血因子療法を試みた。 1.発症機序からみた造血因子療法の適応 (1)原発性好中球減少症と糖原病Ib型では好中球系前駆細胞(GM-CFU)の減少はなく、造血因子によるその増殖促進効果が期待された。再生不良性貧血においては、それが減少〜欠損しており、造血因子の効果は症例によって異なることが推測された。 (2)乳児期の慢性良性中球減少症では、抗好中球抗体による好中球崩壊が関与しているものと思われた。造血因子により好き中球が増加すれば、抗好中球抗体が吸着され臨床的改善がえられるものと期待された。 2.造血因子(M-CSF,G-CSF)療法とその臨床効果 (1)M-CSFは、600万単位/m^2/日を点滴静注で、連日7日間投与した。G-CSFは、50-400μg/m^2/日を皮下注(一部では静注)で、連日2週間以上投与した。糖原病Ib型ではその後、週2回の持続投与に移行した。 (2)原発性好中球減少症:M-CSFは28例に投与し、効果判定可能であった。19例中10例(52.6%)において好中球数の増加がみられた。G-CSFを投与した5例全例において好中球数が増加した。特に先天性好中球減少症2例において、G-CSF投与1周後から好中球数が増加(1,000/μ 以上)し、難治性の感染症が治癒したことが注目された。 (3)糖原病Ib型(6歳、男):G-CSF治療後ち好中球減少は消失し、感染症はなくなった。その後、G-CSF60μg/m^2/日、週2回投与により好き中球数は1,000/μ 以上に維持され、感染の頻度は著減している。(4)再生不良性貧血:7例にG-CSFを投与し、4例ちおいて好中球数の増加が認められた。1例において治療中に骨痛が出現したが、その他の副作用はみられなかった。
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