研究概要 |
1.日本人の染色体の通常型脆弱部位を知るため、末梢血Tリンパ球をPHAで刺激し短期培養し、葉酸欠乏培地、BrdU添加、aphidicolin添加の3条件を用いた。誘発した脆弱部位の大部分は白人における報告に一致したが、葉酸欠乏による17q21,BrdUによる13q31は従来報告がない。 2.Aphidicolin誘発性脆弱部位の頻度が溶媒として用いるethanolの濃度と比例して増加することを発見した。溶媒としてethanolの替りにDMSOを用いるとこの現象は観察されない(文献2)。 3.脆弱部位の研究は末梢血のヘルパ-T細胞を対象としたものが大多数で、それ以外の細胞については殆ど研究がない。細胞の種類による差を知る目的で種々の条件を検討し、各種の細胞に比較的高頻度に脆弱部位を誘発するものとしてaphidicolin0.2μM、26時間処理を用いた(文献4,5)。 a)末梢血ヘルパ-Tリンパ球、b)Epstein-Barrウイルスにより樹立したBリンパ球、c)骨髄細胞、d)皮膚由来線維芽細胞、の4者を比較した。その結果、4者の間で脆弱部位発現の頻度、部位は異なっていた。4者に共通の部位は3p14,16q23のみである。 4.葉酸欠乏により生ずる通常型脆弱部位を4家系、19人について検索した。脆弱部位の頻度の遺伝性は認められず、年齢との相関もなかった。相同染色体を染色体多型によって判別し、双方の脆弱部位発現の頻度を比較したが、差はなっかた(文献3)。 5.組織の差により脆弱部位の異なる現象はaphidicolinに限るか否かを知るため、過剰thymidine処理による脆弱部位をTリンパ球、Bリンパ球、線維芽細胞について行ない、3者で差があることを確認した(文献6)。 6.脆弱X症候群の女性保因者の脆弱Xの複製時期を抗BrdU抗体を用いて測定する方法を考案した。この方法で6例のIQと末梢血の脆弱Xの不活性化(後期複製)との関係をみたが、両者に相関はなかった(文献7)。
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