1.神経芽腫(neuroblastoma;NB)は、早期に発見された限局型の予後良好群と進行型の予後不良群の2群からなっており。両群のNB細胞の生物学的相異について検討した。N-mycの増幅・過剰発現は、NBマススクーニングで発見された限局型(n=4)では認められなかったが、進行型NB(n=3)で認められた。また、MoAbパネルの反応性からは、限局型NBでHLA classI(HLA-ABC、β_2-ミクログロブリン)抗原の発現が多いことがわかった。さらに、NB細胞株(n=14)のうち9種(64%)にN-mycの増幅・過剰発現を認めた。NB細胞株はいずれも進行型NB由来であることおよび上記の結果を合わせて、N-mycがNBの悪性度や進展度と密接に関連していることが示唆された。 2.神経芽腫細胞の分化に伴うプロトオンコジンの発現の変化について検討した。NB細胞株をinviroで、retinoic acid、ポリプレイン酸、abc AMPにて神経細胞へ分化させた時に、N-myc発現が減少しc-src発現が増加することを、またbronodeoxyuridineにてSchwarn様細胞へ分化させた時には分化家庭に、N-mycとc-src両遺伝子が関与していることが示唆された。 3.同一患児の治癒前後より新たに2種のNB細胞株(KP-N-AY、KP-N-AYR)を樹立し、その特性をN-myc、MoAb反応性などから明らかにし、現在薬物耐性獲得の機序の解明も合わせて行っている。 4.今後、自然治癒にかかわるNB細胞の特性をより明らかにするためにNB腫瘍ならびに細胞株を用いて、遺伝子にレベルや蛋白レベル(N-myc抗体など)での研究を続けていく予定である。
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