研究概要 |
当該年度は本研究課題に関する最終年度である。本年度の研究実績をまとめると,(1)ヒトおよびラットの上皮細胞・メサンギウム細胞の培養法はほぼ確立された。しかし,無血清培地での培養法の確立および同定法の確立には今後に間題を残した。 (2)糸球体上皮細胞は尿プラスミノ-ゲン・アクチベ-タ-(UーPA:urokinase)とプラスミノ-ゲン・アクチベ-タ-・インヒビタ-(PAIー1)を産生し,尿中線溶活性の調節に大きく関与していることが示唆された。さらに半日体形成(上皮細胞の増殖)を伴う腎炎の尿中線溶活性は亢進していることが確認され,上皮細胞がどのようなメカニズムにより尿中の線溶状態を調節しているのかは今後の検討課題としたい。 (3)糸球体における3種類の細胞成分(内皮細胞,メサンギウム細胞,上皮細胞)と末梢血中のリンパ球・マクロフィ-ジとの相互関係が重要視されている。そこで,リンバ球の培養上清(本来は血管透過性因子:VPF)と上皮細胞のシア-ル酸代謝との関係を検討した。その結果、VPFがシア-ル酸代謝に大きく係わっていることが確認された。ネ症患者の糸球体基底膜のpolyanion coatingは減弱ないし消失しているという従来の報告を裏付けることとなった。さらに私共は,このVPFがアルブミンの荷電状態に影響を及ぼし,本来のアルブミンよりless anionicなアルブミンが生成される事実をつかんだ。さらにネ症患者の尿中には多量のless anionic albuminが確認され,ネ症発症のメカニズムに糸球体基底膜のpolyanion Coatingの減弱ないし消失のみならず,アルブミンの荷電状態の変化も係わっている可能性が示唆された。
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