各年代のヒトの脂腺の立体像を構築し、体績を計測した。小児では脂腺は小さく、思春期に増大することが男女ともに認められたが、その後の加齢による脂腺の体績変化は男女で明らかな差異を示した。女性では脂腺は20〜30歳代で最大となり、40歳代以降は徐々に縮小し、老齢では小児と同様の大きさとなった。男性の脂腺は20〜50歳代の間、最大の大きさを継続し、60歳代で漸く縮小傾向を示したが、老齢においては小児よりは大きかった。成熟脂腺細胞の大きさは、大きな脂腺ほど大きい傾向を示したが、脂腺体積の増大は主として脂腺細胞数の増加によった。電顕的に、小さな脂腺の周辺細胞(基底細胞)は扁平であるのに対し、大きな脂腺のそれは立方形で活発な細胞増殖が窺われた。皮脂量は、女性では10歳代に急激に増加し、20歳前後に最大となり、30〜40歳代から明らかに減少するのに対し、男性ではやや遅れて増加し、20歳代で女性を上回り、40歳代まで高値を示し、50歳代から僅かに減少傾向を示した。皮脂中のWE/〔C+CE〕比は、男女ともに、20歳代に最大ピ-クを示す年齢変化を示した。この成績は、女性では上述の皮脂量の年齢変化によく一致していた。しかし、男性では、この比は、中年以降、女性よりはやや高いものの、女性に類似した早期に減少する変化を示し、皮脂量の変化には一致しなかった。さらに、WE画分中のC_<16:1>直鎖脂肪酸の割合がWE/〔C+CE〕比によく相関した加齢による推移を示した。24時間尿中の、17ーケトステロイド(17ーKS)とテストテロンの排泄量は、男女ともに17ーKS とテストテロンは20歳代に最大値を示すが、40歳代より女性では著明に減少し、男性では暖やかに減少した。脂腺の活動性は男女ともにテストテロンにより高められるが、女性では副腎アンドロゲンの影響を受け、また、男性では10歳以下の幼少児期においてのみその影響が明らかであることが判明した。
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