研究概要 |
昭和63年度および平成元年度において固有肝動脈に留置したカテ-テルからXeー133を投与して肝動脈および門脈血流量を測定することが、原発性肝細胞癌の動脈塞栓術あるいは手術による治療を安全に実施する上で有用なことを確認した。しかしながら経カテ-テル的に動脈および門脈血流を測定することは侵襲が大きい。 平成2年度においては非侵襲的に体表外からアイソト-プ希釈曲線を得て肝の希釈曲線を肝動脈成分と門脈成分に分けて、とりあえず総肝血流量を肝動脈。門脈血流比に分けることを検討した。 関心領域を左心室,肺野および肝臓に設定し、 ^<99m>Tc標識赤血球10maを肘静脈よりボ-ラスとして注入し,各領域において時間一放射能曲線を得た。左心室放射能を入力とし、肝放射能を出力としてDecenvolution法で肝血流量を得た。また肝希釈曲線の初期相を肝動脈成分,後期相を門脈成分として総肝血流量のうち肝動脈と門脈の比率を得た。 左心室で正確な入力波の得られた25症例において総肝血流量はおゝむね ^<133>Xe法で得られた値(正常人および肝硬変症)に一致し,さらに肝臓部希釈曲線のシミュレ-ションによって算出されたシャント血流は肝硬変症の程度に応じて増大することが示された。シャント血流は ^<133>Xe法では得られないパラメ-タであり、今後精度、再現性を向上させることにより有効な検査法となり得ることが示唆された。また、肝臓部希釈曲線を動脈成分と門脈成分に分けることに関しては、立ち上り部分でその形から主観的に決定する,脾臓部あるいは腎臓部の曲線のピ-ク時間で決定する方法について検討したが、現在までの成績ではいづれの方法も再現性に劣り、誤差の多いことが認められ、今後再に検討が必要であると結論された。 ^<133>Xe法は侵襲が大きいものの治療あるいは血管造影検査と同時に施行し得るので、最も信頼性の高い検査法であるといえる。
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