研究課題/領域番号 |
63480257
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
丹羽 真一 東京大学, 医学部(病), 助手 (30110703)
|
研究分担者 |
福田 正人 東京大学, 医学部(病), 医員
平松 謙一 東京大学, 医学部(病), 医員
伊藤 憲治 東京大学, 医学部, 助手 (80010106)
|
キーワード | 精神分裂病 / 事象関連電位 / P300成分 / 学習 / 認知療法 / 行動療法 / 課題遂行方略 / 脳機能 |
研究概要 |
精神分裂病の諸症状の根底には基本障害として認知障害が存在し、この認知障害の程度は事象関連電位であるP300の振幅の減衰に反映される。本研究の目的は、この脳機能の電気生理学的な指標であるP300を用いて、精神分裂病の認知行動異常の生物学的基礎を解明し、精神療法・行動療法・認知療法の背景にある脳機能の変化を明らかにすることにある。 具体的には、弁別困難な音刺激を用いた三音弁別課題(1:4:1の頻度で出現する950、1000、1053Hzのうちの低頻度刺激のいずれかを目標音としてキー反応を求める)において中間音にたいするP300成分("frequent P300")の出現の有無が被検者の用いる課題遂行方略に関連する、という推定のもとに、精神分裂病患者の課題遂行方略を健常者の用いる方略に変容する試みを行ない、その際のfrequent P300の変化を検討した。 健常者の多くが用いる「中間音を基準にする」という課題遂行方略を精神分裂病患者が学習するための試みとして、 教示法(1):「中間音を基準にする」よう言語的に教示する、 教示法(2):「中間音にもキー反応する」という反応を利用した練習を行なう、 教示法(3):中間音の強度を大きくして中間音の弁別を容易にする練習を行なう、の3教示法を試みた。 教示法(1)(2)(3)いずれによっても課題遂行成績の改善やfrequent P300成分の出現は認めず、むしろ教示法(2)では課題遂行成績の低下とfrequent P300成分相当部分の振幅低下を認めた。いっぽう「中間音を基準にする」方略をみずから発見した1症例では、方略の発見に伴って課題遂行成績が改善し、frequent P300の振幅が増大した。 以上の結果は、臨床上の経験と良く一致するものと思われる。すなわち、(1)短期間の練習では大きな変化は期待できない、(2)患者にとって不適切な介入は混乱を引き起こすこともある、(3)frequent P300の出現の有無は認知のあり方に応じて変化する可能性がある、などである。
|