睡眠障害に関与する自律神経異常の紡錘波・デルタ波睡眠図による研究

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 63480261
• 研究機関: (財)東京都神経科学総合研究所
• 研究代表者: 阿住 一雄 東京都神経科学総合研究所, 心理学研究室, 副参事研究員 (90073056)
• 研究分担者: 白川 修一郎 東京都神経科学総合研究所, 心理学研究室, 主事研究員 (20100141)
• キーワード: 紡錘波・デルタ波睡眠図 / 多系続変性疾患 / 筋緊張性ジストロフィ- / 自律系指標と睡眠 / 自律系逆説性経過型

研究概要

前年度にまとめた定量的自動分析による「紡錘波・デルタ波睡眠図」における正常規準値、自律系指標との相関を対照所見として多系統変性疾患や筋緊張性ジストロフィ-などの睡眠障害を分析した。用いられた神経疾患は自律神経障害を優位にしめす疾患で、この自律系異常がどのように睡眠障害に関与しているか、また、その異常のタイプの分類を検討することを意図した。疾例は東京医科歯科大学精神科および独協医科大学神経内科の協力によって集収された。
1)紡錘波・デルタ波睡眠図による所見として、Shy-Drager Syndrome(SDS)は紡錘波パタ-ン、デルタ波パタ-ンは正常群に比較して有意に低値で経過した。個々の紡錘波の構成要素、すなわち、出現率・平均周波数・持続時間・平均振巾の4要素について検討すると、出現率と平均周波数は有意に低値(前者)で周波数は増加した。同様にデルタ波について、出現率・周波数・振巾の3要素を検討すると、出現率と振巾はともに有意に低値であった。また、脊髄小脳変性疾患のうち、自律系症状を示すオリ-ブ・橋・小脳萎縮症(OPCA)はデルタ波パタ-ンが持続的に低値を示した。個々の紡錘波4要素では平均振巾が低い傾向を示した。デルタ波3要素については、出現率が有意に低値であった。さらに筋緊張性ジストロフィ-Myotonic Dystrophy(MD)はOPCA同様にデルタ波パタ-ンの経過は低値であった。個々の紡錘波4要素については平均周波数は有意に速く、平均振巾は低い傾向がみとめられた。デルタ3要素では出現率と振巾はともに有意に低値を示した。
2)上記の睡眠図と自律系指標との関連に関して、とくに印象的な異常所見は1分間当り脈博数の係過である。SDSの脈博数経過はデルタ波成分の増加の著しい期間には低下した(すでに他の研究者による発表もある)。OPCAについてもデルタ波成分の少ない期間(75.5±1.4…SD,n=10)にくらべて増加した期間(79.8±1.1…SD,n=10)では明瞭に脈博数が増加した。

研究成果

• [文献書誌] 阿住一雄: "睡眠と自律神経(自律神経障害ー最近の動向)" Clinical Nauroscience(Jap.). 7(7). 708-710 (1989)
• [文献書誌] Azumi,K.& Shirakawa,S.: "Comparison between Hypnotics and Psychotropic Crugs by Using a Spindle-Delta Wave Sleep Diagram." Sleep Research,BIS/BRI,UCLA. 18. 42 (1989)
• [文献書誌] Ishizuka,Y.,Shirakawa,S.& Azumi,K.et al: "A Subjective Evaluation of Sleep during the Menstrual Cycle." Sleep Research,BIS/BRI,UCLA. 18. 421 (1989)
• [文献書誌] 白川修一郎,石束喜和,阿住一雄: "マイクロコンピュ-タ-による睡眠時高振巾S波のリアルタイム自動解析システムの開発とその応用。" 脳波と筋電図. 17(1). 37-44 (1989)
• [文献書誌] 白川修一郎,石束喜和,阿住一雄: "断眠および昼寝の紡錘波構造要素に対する影響ーーマイコン・リアルタイム解析による研究ーー" 臨床脳波. 31(7). 463-468 (1989)