プロラクチンによる免疫機能の調節機構を明らかにするため、臨床的ならびに実験的な面から検討を進めた。 (1)臨床的な検討:73名の高プロラクチン血症の患者を対象に抗甲状腺抗体の発現率を調べた。その結果、高プロラクチン血症の女性では、抗マイクロゾ-ム抗体、抗サイログロブリン抗体とともに、対照に比べて陽性者の多いことが明らかになった。年代別では、30代の女性患者は同年代の健康人に比べて、有意に高い陽性率を示した。高プロラクチン血症の患者の抹消血リンパ球のサブタイプを調べると、Bリンパ球の比率が高いことも明らかになった。この事実は、プロラクチンがBリンパ球の数を増加させることにより、免疫機能を賦活していることを示している。 (2)動物実験における検討:MRL/lprマウスのリンパ腫、生存率、血中尿素窒素、尿蛋白、腎組織像に対するプロラクチンの影響を調べた。すなわち、6週令のMRL/lprマウスを3群に分け、ドンペリドン投与による高プロラクチン血症マウス、ブロモクリプチン投与による低プロラクチン血症マウスに起こった変化を対照と比較した。その結果、各個体のバラツキが大きく、多くの指標に有意の差を見いだせなかったが、尿蛋白量のみは高プロラクチン血症マウスで明らかに大であることが明らかになった。この事実もまた、臨床的な検討と同様、免疫機能に対するプロラクチンの増強作用を示すものと考えられる。
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