研究概要 |
過去1年間に扱った慢性造血器腫瘍の内訳は以下のごとくである。 慢性骨髄性白血病(CML)90例(うち急性転化例14例)、骨髄異形成性症候群(MDS)26例、多血症(PV)1例、骨髄繊維症(MMM)2例、血小板血症(ET)1例の合計120例。これらり症例について骨髄液、末梢血などの細胞よりギムザ分染法による染色体分析をするとともに、フェノ-ル・クロロホルム法にてDNA抽出を行った。また、一部症例ではGTCーCsClによる超遠心でRNA抽出を行った。CML慢性期においていわゆる標準型(9;22転座)Philadelphia染色体以外のもの(複雑型Ph^1やその他)が4例、CML急性転化時の5/7例にPh^1染色体+付加的染色体異常を認めた。MDSで染色体異常が認められるものは11/26例であった。MDSの1例は急性骨髄性白血病に移行したが、その核型はMDS期、急性白血病時いずれもinv(3)(q12q29)であった。再生不良性貧血からMDSに移行した1例でMDS期に+21、14q+からさらに-7,+der(1)t(1;7)(p11;p11),+marと核型変化を認めた。PV,MMM,ET例のいずれも染色体異常は認めず、臨床像にも変化はなかった。これまでのCML90例についてbcr(break point clusterregion)内外の4種類のプロ-ブ;3'bcr(Hind III-Bgl II:1.2kb),5'bcr(Hind III-BamH I:0.6kb),5'bcr(Bgl II-Hindd III:2.0kb)5'bcr(Hind III-Bgl II:3.5kb)を用いてDNA解析を行ったところ、bcr外に切断点を有する例が2例、3'bcr欠失が9例、5'bcr欠失が2例にみられた。 bcr外の切断1例と5'bcr欠失の1例ではbcrーabl遺伝子の発現はノ-ザン法では認めなかったが、PCR(polymerase chain reaction)法では発現が認められた。5'bcr欠失の2例はリンパ芽球性急性転化を来した。3'bcr欠失例も5'bcr欠失例もCMLの慢性期で認められ、急性転化との直接的関与は少ないと考えられた。このような特殊な分子生物学的特徴を有する症例はbcrーabl遺伝子のCMLの進展への関与を解明するのに有用である。
|