研究概要 |
過去2年間に扱った慢性造血器腫瘍の内訳は以下のごとくである。慢性骨髄性白血病(CML)145例、骨髄異形成性症候群(MDS)54例、多血症(PV)9例、骨髄繊維症(MMM)4例、血小板血症(ET)5例の合計217例。これらの症例について骨髄液、末梢血などの細胞よりギムザ分染法による染色体分析をするとともにフェノ-ル・クロロホルム法によるRNA抽出、一部症例ではGTC-CsClよるRNA抽出を行った。CML慢性期において標準型Philadelphia染色体(9;22転座)以外のもの(複雑型Ph^1やその他)が9例、CML急性転化時に8/11例にPh^1染色体+付加的染色体異常を認めた。MDSで染色体異常が認められるものは27/54例であった。PVの1例が急性骨髄性白血病(AML)に移行し、再生不良性貧血の1例がMDSに移行したが両者に-7,+der(1)t(1;7)(pll;pll)を認めた。MMM,ETには染色体異常は認めず、臨床像の変化もなかった。 これまで90例のCMLについてbcr(break point cluster region)内外の4種類のプロ-ブ(1.2kb,HindIII/BglII digested 3'bcr probe 0.6kb HindIII/BamHI digested 5'bcr probe,2.0kb BglII/HindIII digested 5'bcr probe,3.5kb HindIII/BglII digested 5'bcr probe)を用いてDNA解析を行った。bcr外切断例が2例(2%)、3'bcr欠失9例(10%)、5'bcr欠失2例(2%)認められた。PCR(polymerase chain reaction)法での検討からbcr外切断の1例と5'bcr欠失の1例でノ-ザン法では検出できないbcr-abl遺伝子の発現を認めた。3'bcr欠失例、5'bcr欠失例もCMLの慢性期であり急性転化との直接関係は不明であった。5'bcr欠失例の2例はいずれもリンパ芽球性急性転化を来した。CML慢性期の1例でインタ-フェロン治療によりph^1染色体の消失、bcrの再構成(-)、PCR法で再構成(+)があり、現在観察中。このような特殊な分子生物学的特徴を有する症例はCMLの進展の解明に有用と考える。
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