ヒトピルビン酸キナ-ゼ(PK)のL型cDNAは先年度全塩基配列を決定したが、PK異常症の遺伝子レベルでの病因解明を進める上で、その前段階としてヒトL型PK遺伝子の解析をまず行なった。L型PK遺伝子の単斉には、ヒト末梢血白血球DNAからλファ-ジベクタ-(λDASH)を用いて作製した遺伝子ライブラリ-に、ヒトL型PKcDNA、hlpkーE、Aおよび1をプロ-ブとして用いた。得られたヒトL型PK遺伝子は全長約10.5キロ塩基対で、11個のエクソンからなり、エクソンの数、大きさ、イントロンの位置のいずれも既に報告されているラットL型PK遺伝子に酷似していた。ヒト遺伝子DNAから類推するアミノ酸配列とラットL型PKとの間のホモロジ-はアミノ酸レベルで93.0%、塩基レベルで87.1%であった。ヒトL型PKcDNAの5端に相当する部位を+1とし、それより上流の配列をマイナス表示すると、-71から-67塩基対にCAATボックス様配列、-195から-178塩基対には、肝臓に特異的に発現する遺伝子の転写促進因子であるLFーB1の認識配列と考えられる塩基配列が認められた。ラットL型PK遺伝子では、肝に発現するL型と赤芽球系細胞・網赤血球に発現するR型の両アイソザイムのmRNAは、L型PK遺伝子の異なったプロモ-タ-を用いて転写され生成されることが明らかにされている。今回ヒトL型PK遺伝子の上流部分の-440から-342塩基対に、ラットR型PKとホモロジ-の高い領域が見出された。その領域から翻訳されるアミノ配列とラットのそれとを比べると、アミノ酸レベルで60.6%であった。近親婚の両親から生れた真のホモ接合のPK遺常による遺伝性溶血性貧血の1例についてその病因解明のための遺伝子解析を開始し、単一塩基置換を見出すことができた。しかしこれが病因であると結論できるまでにいたっていない。
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