研究概要 |
赤血球酵素異常症の新症例発堀については、昭和63〜平成元年の2年間に全国から檢体依頼を受けた原因不明の遺伝性溶血性貧血98例からピルビン酸キナ-ゼ(PK)異常症4例、グルコ-ス-6-リン酸脱水素酵素(B6PD)異常症4例,三炭糖リン酸イソメラ-ゼ(TPI)異常症2例1家系、アデニル酸キナ-ゼ(AK)異常症1例の計4種10家系11例を発見した。このうちTPIおよびAK異常症はハンガリ-より依頼をうけて送られた血液で見出したもので稀な症例である。PKのアイソザイムにはM_1とM_2、LとRの4種があり前2者はM遺伝子、後2者はL遺伝子から産生されることが野口、田中らのラットの研究で知られている。われわれは昭和62年度にヒトL型PKcDNAの全塩基配列を決定したが、昭和63年度にはヒトM_2型PKcDNAの全塩基配列、ヒトM_2型PK蛋白のし一次構造を決めることができた。ヒトMおよびL′型を区別できる3′端の塩基対からなるプロ-ブを作成し、ヒト諸組織でのアイソザイム発現をノ-ザン解析でしらべ、肝、腎ではM、L両者が発現し、白血球ではMが主だがLも少量発現していることをみた(昭和63年度)。平成元年度にはヒト白血球DNAからL型PK遺伝子DNAをクロ-ニングして解析した。ヒトL型PK遺伝子は全長約10.5キロ塩基対で11個のエクソンからなり、その構成はラットL型PK遺伝子とよく似ていた。プロモ-タ-領域にはCAATボックス称配列及び肝特異的転写促進因子LF-B1に認識されうる配列(GTGTTAAATTATGGACCC)が認められた。更に、上流にはR型PKの5′端を構成すると考えられる配列が認められ、ラットと同様ヒトL、R両アイソザイムのmRNAはそれぞれ異なるプロモ-タ-を用いて転写され生成する可能性が示唆された。なお血族結婚の両親から生まれたホモ接合体PK異常症例1例で単一アミノ酸置換を見出したが未決定。
|