研究概要 |
ヒト肺癌細胞株を研究材料としてチオール系蛋白分解酵素インヒビター(TPI)を精製分離し、その生化学的特性と肺癌細胞の増殖に及ぼす影響について検討し低下の結果を得た。 1.ヒト肺癌細胞株LKー2(扁平上皮癌)の培養液と培養細胞からセファデックスGー100ゲル3過法とDEAEーセファセルイオン交換クロマトグラフィーによりTPIを分離した。培養液からは分子量9万と1万のTPIが分離され、活性は低分子TPIが主体であった。低分子TPIは、チオール系蛋白分解酵素に特異的なインヒビターであり、等電点がPI6.3とPI6.4で、PH6からPH10の範囲で安定、60℃以下で安定であった。 LKー2の培養細胞からは分子量1万のTPIのみが分離され、熱とPHの安定性は培養液中の低分子TPIとほぼ一致した。 2.他のヒト肺癌細胞株Luci-10(腺癌)でも培養液から分子量9万と1万のTPIが分離され、培養細胞からは分子量1万のTPIのみが分離された。 3.Luci-10の培養液中にTPI活性が経時的に増大し、単位細胞及び単位時間当りで比較すると、対数増殖期に比べて定常期では2倍から3倍高値であった。 4.LK-2の細胞培養において、部分精製した培養液中低分子TPIは濃度依存的に〔^3H〕チミジンの取り込みで見たDNA合成を抑制した。その他のTPIである血中のα_2ーTPI,尿中TPI、微生物由来のE-64でも抑制作用が認められた。一方、セリン系蛋白分解酵素インヒビターである尿中トリプシンインヒビター、大豆トリプシンインヒビターは全く影響を及ぼさなかった。しかし、チオール系蛋白分解酵素のパパイン、フィシン及びカテプシンBではDNA合成が促進された。
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