制癌剤による癌細胞への影響として、形態学的、病理学的変化がおこる以前に癌細胞PNA傷害を早期の段階で定量比することができれば制癌剤の殺細胞作用と即座に予知し、個々の癌患者に対しより良い治療法を検索することが可能となる。そこで遺伝子工学の分野で確立された手法として広く用いられているニックトランスレ-ション法を用いて、制癌剤による癌細胞DNA傷害をinsituの条件下で可視化検出し、定量化をおこない、制癌剤感受性の判定手段として確立した。 即ち、制癌剤による培養癌細胞DNA傷害部位を大腸菌DNA polymeraseIを用いて、 ^3Hラベル3リン酸又クレオチドで人工的に修複、次に乳剤を感光させて、黒化度として顕微鏡下にDNA傷害の程度を定量化する方法である。 この方法により数十分という短時間の薬剤処理で、また少数の細胞で判定が可能となった。invitro条件下、マウス白血病由来p_<388>細胞とアドリアマイシン耐性株p_<338/ADR>のあいだで、アドリアマイシンによるDNA傷害の程度に差を認め、アドリアマイシンに対する感受性とDNA傷害の密接な関係が明らかとなった。さらにこの方法を用いることで、温熱および放射線によるDNA傷害も定量化することができた。 ニックトランスレ-ション法は制癌剤感受性の判定に有用な手段となりうると考えられる。
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