シクロスポリン(CSA)投与腎移植患者42名のリンパ球が産生する平均ガンマ-インターフェロン(α-IFN)は、54.3±12.4IU/mlと健常人23名の平均134.1±18.8IU/mlに比べ、約60%の抑制が認められた。透析患者より得たリンパ球(n=20)ではこのような抑制は認められず(130.7±16.8IU/ml)、また免疫抑制剤としてイムラン(Az)を使用した患者より得たリンパ球(n=22)でも平均96.0±16.1IU/mlとCsA使用患者に比べて抑制率は軽度であった。同様にIL-1産生に関してもCaA使用患者(n=20)では、平均5.1±0.7IU/mlと健常人平均13.0±2.9IU/ml(n=21)に比べて約60%の抑制が認められた。透析患者では平均15.5±4.7IU/mlと健常人平均よりむしろ高めであった。Az使用患者においては10.1±2.7IU/mlとα-IFN同様、CsA患者に比べて抑制は軽度であった。これらα-IFNとIL-1の産生抑制を遺伝子レベルで検討する目的で、リンパ球およびマクロファージよりmRNAを抽出し、それぞれα-IFNcDNAおよびIL-1(α、β)cDNAを用いてハイブリダイゼーションをおこない、それぞれのmRNAの産生を検討した。その結果、CSA使用患者においては、培養上清で検討したのと同様にmRNAレベルにおいても健常人、Az使用患者に比べて優位にその産生が抑制されており、mRNAへのtranscription以前のレベルでこれらサイトカインの産生が抑制されていることが判った。またCsAはFACSを用いて検討したところ、IL-2レセプターには影響を与えないとされてきたが、IL-2レセプターに対するcDNAを用いて検討したところCsA患者リンパ球は、その発現が抑制されており、CaAはサイトカインの産生ばかりでなく、IL-2の受容体の発現にも抑制効果を示し、その結果、強い免疫抑制効果を示すことが明らかとなった。今後、拒絶反応発症時にこれらの遺伝子発現がどのようにコントロールされているかを検討することは、拒絶反応のメカニズムの解明にもつながり、重要と考える。
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