研究概要 |
(胃癌切除後胆石症の特徴)R_2以上のリンパ節郭清を行った胃癌治癒切除305例(昭和50〜55年迄手術のA群147例と昭和56〜61年迄手術のB群158例)に対し、6ヵ月毎の定期的胆道超音波検査を行った。胆石発見頻度は75例24.6%で性別差なく、胃全摘、食物が十二指腸を通らない術式(BII、ρ吻合)に多い傾向にあった。なお、B群ではBIに比べBIIで有意に高かった。B群の観察期間が延長するにしたがい、A群とB群の胆石発生頻度は再建術式による違いはあるものの、BI20%未満、BII、ρ吻合25〜35%前後に収斂するものと予想される。胆石発見時期は約90%が6年以内であった。また、肝障害例に有意に多く胆石が発生した。手術を行った15例ではビ石、黒色石が大半で多発性,胆管結石を伴うものが多く細菌培養陽性であった。胆嚢収縮能は術後1ヵ月前後迄は障害されていたが、6ヵ月以後は回復した。然し、空腹時胆嚢面積は拡張したままで胆石生成の一因と思われた。(実験的研究)以上の臨床的デ-タにもとずきコントロ-ルとして外胆嚢瘻造設犬(C犬)を作製、これに胃切除+迷切を加えたBII犬、BI犬を夫々3〜4頭を作り、1ヵ月毎に胆嚢胆汁の採取、分析、細菌培養、肝機能のチェックを1年間に亘り行った。その結果1年後の剖検でBII犬2頭に黒色石が発生、胆汁脂質の変化では7〜10ヵ月以後TBA、CAの減少、DCAの相対的増加、遊離型胆汁酸の比率が増加し、細菌感染との関連が示唆された。しかし、この変化はBI犬、C犬の順に弱かった。BI犬は4月に剖検予定で、デ-タを整理中である。平成2年度はBII犬に肝障害を発生させ胆汁組成の変化、胆石発生との関連を追う予定である。この際胆嚢収縮能との関係、胆石発生時期についても検討したいが、性能のよい超音波診断装置がないため、超音波学的には実験開始時および終了時の開腹時のみの使用に終っている。新しい機種の購入により胆石発生時期が明らかになるもと思われる。
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