研究概要 |
胃切除後胆石症の発生原因,頻度については不明な点が多い。そこで胃癌治癒切除例を対象に定期的胆道超音波検査を行い,発生時期,性別頻度,術式別頻度を検討した。また、術前・術後の超音波学的胆嚢運動機能検査を行い,胆石発生原因との関連を追及した。一方,胆石の形成過程を知るには胆嚢胆汁の経時的検索が必要である。しかし,臨床的には胆汁の採取が技術的,人道的に困難なため,外胆嚢瘻造設犬,これに胃癌に準じた胃切除を追加したBーI犬,BーII犬の3群間で比較検討した。結果は以下の如くであった。A臨床例:86.4%が6年以内に,しかもその多くは3年以内に発見された。性別差なく,胃亜全摘(22.8%)に比べ胃全摘(32.8%)に多く,BーI,空腸間置(16.7%)に比べBーII,ρ吻合(30.0%)に多かった。また,肝機能正常例に比べ肝障害例に多発した。胆嚢収縮能は術後1カ月前後の術後早期では,術前に比べ有意に低下していた。しかし,術後6カ月前後の術後後期では,術前と同様にまで回復した。一方,空腹時胆嚢面積は,術前に比べ術後早期・後期共拡張したままであった。この傾向はBーII,ρ吻合で強かった。そこで胆石発生の高危険群に予防的胆嚢摘除を行っている。B実験例:総胆汁酸は3群間に差はなかったが,遊離型胆汁酸は対照群に比べ他の2群で高く,分画ではBーI群,BーII群で一次胆汁酸CAの減少,二次胆汁酸DCAの増加傾向が強かった。胆汁酸分画比率は対照群では%CDCA,%CA,%DCA共ほぼ一定に推移したが,BーI群,BーII群では%CDCAはほぼ一定であるものの,%CAの減少,%DCAの増加,月によってはその逆転がみられた。一方,他の胆汁脂質に差はなく,lithogenicity は3群共低かった。胆汁感染はE,coli を主体に11頭中10頭にみられ,BーI群3頭中1頭,BーII群4頭中2頭にビリルビンカルシュウムを含む黒色石が発生した。このことより胆石形成には細菌の関与が大きいものと思われた。
|