1.研究目的本研究の目的は新潟県における胆嚢癌多発の背景因子として新潟県内で使用量の多い農薬、特に除草剤MCPA、MCPBが何らかの役割を果たしているか否かを知るため、1)体内残留農薬の検出。及び2)実験動物におけるMCPA長期投与の胆嚢粘膜に及ぼす影響の観察。を行うことである。 2.63年度研究成果 63年度は実験条件を中心に検討を行った。 1)体内残留農薬の検出法について 皮下脂肪と胆汁を検体としジエチルエーテル抽出後高速液体クロマトグラフ並びにガスクロマトグラフにより分析を行った。特にα-、β-、σ-BHC、CNP、DDTの検出にガスクロマトグラフGC-9Aを用いたが、従来のガラスカラムではCNPとDDTのピークが重なることが判明した。そこで、より分離能の良いキャピラリーカラムに変更し、現在分離同定を進めている。今日まで胆汁中にはBHCの存在が疑われている。 2)ハムスターへのMCPA慢性投実験について 7週齢の雌ゴールデンハムスター20匹を一群とし、MCPA200ppm、500ppmおよび800ppm含有の固型飼料(オリエンタル酵母製MF)にて21週まで飼育した。その結果21週目まで死亡例はなく、体重の増加曲線も3群間で差がなかった。肉眼的には胆嚢はじめ各臓器に癌の発生を認めたものはなく、目下胆嚢の組織学的検索を進めている。今後1000ppm以上の高密度MCPAの影響を検討する予定である。一方、発癌剤BOP投与ハムスターでは約40%に胆嚢・胆管癌の発生が認められた。BOPとMCPAの同時投与によりMCPAの発癌促進作につき検討を開始した。
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