肝移植の成功にとってまず第一に重要な点は、移植肝が良好なバイアビリテイを保持することである。したがつて術後管理は、このバイアビリテイーを評価しながらあたらねばならない。ところが従来の肝機能検査では正しくこれを反映しない。そこで、肝のレドツクス状態を示す動脈血中ケトン体比が、移植肝のバイアビリテイを評価できるかをビ-グル犬の肝移植で調べた。この結果、移植後生存する群は、動脈血中ケトン体比の回復がすみやかで、合併症を有したり、死亡する群は、この回復が悪いか、全く回復しないかであった。そこで、この動脈血中ケトン体比を示標に、今世界の肝移植で、最も問題となっているドナー不足の解決のため、生体ドナーからの移植の可能性についてビ-グル犬を用いて研究した。生存犬を麻酔し、この肝の一部を切除、種々の方法で肝保存した後、レシビエン〓ト犬の肝を全摘出して、この保存肝を移植した。15頭中10頭が5日以上生存し、しかも、生存群は、血中ケトン体比の回復がすみやかで、死亡した群は、回復しなかつた。この結果は人において、親から子への生存肝移植の可能性を示唆するものであった。また、肝移植において、種々の因子が移植肝のバイアビリテイーに影響し、バイアビリテイを低下させ移植成績を下げる可能性がある。したがって、このバイアビリテイーを正しく反映する血中ケトン体比を評価し、それに基づいて術後管理にあたらねばならないことが〓った。
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