1、膵β細胞株(SVーPB1205細胞)をAlginateーpolylysineーalginateマイクロカプセルに封入し、培養することが出来た。しかしながら、封入した細胞は長期間の生存あるいはカプセル内での増殖は不可能であった。一方、同様の方法で、岩村が樹立した膵癌培養細胞株(SUITー2細胞)をカプセル内に封入すると良好な増殖を示した。また、SBーPB1205はデキストランビ-ズ上での増殖は可能であったことなどから、SBーPB1205細胞の生存環境が限定されていることが示唆された。今後、カプセル材質、培養環境などの工夫や、環境適応力のある膵β細胞株の樹立が必要と考えられた。 2、手術で採取したヒト膵β細胞にプラスミド(pMT10D)を移入したが増殖性を持ったヒト膵β細胞の株化には成功していない.そこで、手術で採取したヒトインスリノ-マ細胞(良性)およびヒトグルカゴノ-マ細胞(良性)の培養、ならびにそれぞれの細胞にプラスミドを移入して培養細胞株化を試みた.これら腫瘍細胞は約3カ月培養が可能であったが、自己増殖能を有する株化細胞を樹立することは出来なかった。 3、ハイブリッド型人工臓器開発の一連の試みとして、成熟ラット肝細胞にプラスミドを移入して自己増殖能を有する肝細胞株(RTH33細胞)を樹立した。この細胞株は尿素合成能、グルコ-ス合成能、ビリルビン抱合能など肝細胞固有の機能を保持していることが確認された。
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