1、Simian Virus 40 (SVー40)感染によってトランスフォ-ムした凍結保存膵β細胞株(SVーPB 1205)を解凍し、実験糖尿病ラットの脾臓内に移植すると、移植後2週間にわたって血糖値の上昇が抑制することが再確認されたが、SVーPB1205を脾臓内で確認することは出来なかった。そこで、免疫反応が弱いとされる腎皮膜下に移植した。血糖上昇は同様に抑制されるものの、移植細胞を形態的にとらえることは出来ず、血糖上昇の抑制は移植細胞の壊死によるインスリン放出によるものと結論した。移植細胞の宿主による免疫排除機構からの防御と移植細胞の宿主への影響(遠還転移・局所浸潤など)除去の目的でSVーPB1205をalginateーpolylysineーarginateをマイクロカプセルに封入し培養を試みたが、カプセル内で長期間生存あるいは増殖させることには成造しなかった。しかし、デキストランビ-ズCytodex 3を使用したマイクロキャリア-培養法によって、培養細胞収量を増加させることには成功した。今後、環境適応力のある膵β細胞株の樹立や培養条件の検討が必要と考えられた。 2、手術で採取したヒト膵β細胞、インスリノ-マ細胞(良性)やグルカゴノ-マ細胞(良性)の培養ならびにプラスミド(PMT10D)移入による培養細胞株化を試みたがいまだ成功していない。 3、ハイブリッド型人工臓器開発の一連の試みとして、成熟ラット肝細胞にプラスミドを移入して自己増殖能を有する肝細胞株(RTH33細胞)を樹立した。この細胞株は、尿素合成能、グルコ-ス合成能、ピリルピン抱合能など肝細胞固有の機能を保持していることが確認された。
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