研究課題/領域番号 |
63480315
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
宇都宮 譲二 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (70013901)
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研究分担者 |
楠 正人 兵庫医科大学, 医学部, 助手 (50192026)
名取 博之 兵庫医科大学, 医学部, 助手
黒木 輝幸 兵庫医科大学, 医学部, 助手 (70205235)
山村 武平 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (90068510)
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キーワード | 大腸全摘術 / 回腸肛門吻合術 / 潰瘍性大腸炎 / 大腸腺腫症 / 胆汁酸 / 大腸他臓器相関 / 回腸嚢炎 / 大腸化 |
研究概要 |
1.術式の改良への試みと臨床的評価:(1)直腸粘膜抜去を経腹的のみの操作で試みたが歯状線まで完全に抜去することは手技上困難で、従来からのprone Jack knife位による経肛門操作の方が完全に抜去でき、手技的にも簡単であることを再認識した。(2)粘膜抜去を省略し、直腸筋筒を歯状線のレベルで切離する無筒法を試みた。Peckの基準による排便機能の成績は優良の率が本法では5/9(56%)にすぎず、従来の短筒法での成績42/48(87.5%)に比し悪かった。また肛門内圧の面からも術後6カ月目の時点で術前値に比し最大静止圧が短筒法では平均70%回復するが、無筒法では30〜50%にすぎず、従来の短筒法の合理性を確認しえた。実験的研究ではGABAが内括約筋の緊張を高める成績を得たので、GABA分解酵素阻害剤を臨床的に応用したところ、投与後33〜64%の静止内圧の増加を得、2例に排便機能の明らかな改善を経験した。 2.大腸全摘術後の臓器相関:(1)胃液分泌を同一症例の全摘前、後6カ月で比較検討したが、酸濃度、酸分泌量ともに有意の増加は認められず、動物実験の結果とは異なった成績を得た。回腸による代償機転(いわゆるileal break)の可能性を内分泌面から今後検討したい。(2)胆汁酸排泄量および一次胆汁酸の比率は全摘後loop ileostomyの時期には術前に比し著しく増加したが、回肛吻合術完成後には明らかに術前の値に復する経口がえられた。回腸嚢の大腸化による代償とも考えられ、さらに長期のfollowが必要である。 3.回腸嚢炎の発生機序とその対策:J嚢作製時、回腸嚢を回腸動脈および回結腸動脈の両側支配とする意義を検討し、回腸嚢炎の一因として虚血が関与する可能性を、動物実験で得つつある。臨床的には本合併症の頻度は約15%であり、圧倒的に潰瘍性大腸炎症例に多い、細菌叢の変化や粘膜の生化学的変化を大腸腺症例と比較検討したい。
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