ステロイド性大腿骨頭壊死の成因ならびに予防法に関する研究

1989 年度 研究成果報告書概要

• 研究課題/領域番号: 63480319
• 研究種目: 一般研究(B)
• 配分区分: 補助金
• 研究分野: 胸部外科学
• 研究機関: 名古屋大学 (1988, 1990); 神戸大学 (1989)
• 研究代表者: 清水 富男 神戸大学, 医学部附属病院, 助手 (90196527)
• 研究分担者: 臼井 康雄 神戸大学, 医学部附属病院, 助手 (20203523) ; 松原 司 神戸大学, 医学部, 助手 (80192342)
• 研究期間 (年度): 1988 – 1990
• キーワード: 大腿骨頭壊死 / 脂質代謝異常 / ステロイド / アルコ-ル

研究概要

ステロイド剤の投与に伴う変化としては先ず血中脂質の上昇が認められた。骨における変化としては骨内圧は上昇し、逆に骨内血流量は有為に減少していくことが判明した。組織学的には骨髄の脂肪髄化と骨梁の菲薄化が漸次進行していった。そして骨形成能はステロイド投与により高度に抑制されていることが判明した。また軟骨下骨の骨細胞窩には脂肪の沈着が認められ,骨細胞が脂肪により圧迫されている像が多く観察された。このような組織学的所見は実験のみならず、死の直前に大量のステロイド投与を受けた患者の剖検時に摘出した大腿骨頭でも同様に観察された。しかし,骨頭内の血管についてはこの剖検時摘出標本でも実験のものと同様に明らかな異常所見は認められなかった。また虚血に伴う骨細胞の変化はステロイド投与に伴って認められるような脂肪変性像とは明らかに異なるものであった。ところでアルコ-ルを長期家兎に投与すると漸次血中脂質と血清コルチゾ-ルが上昇し、ステロイド投与時に観察されたと同様の末梢における脂肪の沈着が観察された。このことより大腿骨頭壊死の2大発症因子であるステロイドとアルコ-ルは同様の機序により大腿骨頭壊死を発生せさる可能性が示唆された。またステロイド投与に伴う血中脂質の上昇と末梢組織における脂肪の沈着は脂質代謝改善剤を同時投与することにより軽減されることも判明した。これらの所見は本症の成因として脂質代謝障害が大きく関与していることを示唆するものであるといえよう。
臨床的にはSLEや腎移植などで大量のステロイド投与を受けている患者150名に脂質代謝改善剤を併用投与して現在まで2年間経過を観察しているが、現在まで明らかな大腿骨頭壊死症の発生を観察していない。今後も長期にわたり観察していく予定である。

研究成果

• [文献書誌] K.Kita,et al.: "Changes in bone marrow blood flow with aging" J.Orthop.Res.5. 569-575 (1987)
• [文献書誌] Y.Usui,et al.: "An electron microscopic study of the changes observed in osteocytes under ischemic conditions." J.Orthop.Res.7. 12-21 (1989)
• [文献書誌] T.Shimizu,et al.: "Steroid-induced early changes of the femoral head in man." J.Clin.Elect.Micro.21. 646 (1988)
• [文献書誌] K.Kawai,et al.: "Changes of intraosseous blood flow and pressure in steroid treated rabbits." Orthop.Trans.13. 74 (1989)
• [文献書誌] H.Muratsu,et al.: "Alcohol-induced accumulation of lipid in the oateocytes of the rabbit femoral head." Orthop.Trans.14. (1990)
• [文献書誌] Y.Watanabe,et al.: "Pathology of femoral head necrosis in rheumatoid arthritis." Rheumat.Int.9. (1989)
• [文献書誌] 広畑和志,川井和夫: "特発性大腿骨頭壊死症の診療Orthopaedics特発性大腿骨頭壊死の病因(発生の危険因子について)" 全日本病院出版会, 5-14 (1988)