肺小細胞癌の癌細胞の持つ生物学的特性を検討するため、以下の点に付き検討した。 手術によって生体より得られた癌組織から、各種実験的検討が可能な浮遊細胞に分離する方法につき検討した。機械的分離法として、眼科用せん刀による細切法と金入メッシュによるすりつぶし法、化学的方法としてトリプシンを用いた酸素法を比較検討した。得られる細胞数としては、メッシュ法がもっとも簡便で効率的かと思われたが、細胞のViabilityとしてはせん刀による方法のほうが優れ、また酵素法は細胞の膜抗原に対する修飾作用の可能性から、今後の実験のためには適さないのではないかと思われた。 次に、このようにして得られた癌細胞中の、繊維芽細胞、リンパ球、赤血球などの混在細胞の除去方法につき、Ficoll paque法、プレート付着法などを検討したが、なお不十分であり、Percoll法、ナイロンウール法などの検討も考慮中である。 初代培養の培地としては、RPMI、Ham、MEM、etcなどの多種培地とともに二重寒天培地も検討したが、後者はコロニー形成までに時間を要し、また形成率の低さからも、主培養方法としては適さないと思われた。現在ILー2などの添加物の効果、無血清培地なども検討中である。 同時に現在までの分離、初代培養法にて、腺癌7例、扁平上皮癌4例、小細胞癌1例、他癌種3例で7日から最長4ケ月の培養が可能であったため、今後、この方法にて得られる初代培養細胞を用いて、細胞膜抗原の発現、対応するモノクローナルの反応などから検索をすすめていく予定である。
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