研究概要 |
1.抗癌剤感受性試験に関する研究(1)細胞採取方法:癌組織を細切しメッシュにより瀘過、Ficoll-Paqueでの比重遠心法による分離法の問題点は、【○!1】メッシュに残る癌細胞が多い、【○!2】Ficoll-Paqueによる分離の際、リンパ球や線維芽細胞の混入が生じることなどである。細切後、collagenase + DNase、trypsinなどの酵素処理による方法では【○!1】酵素処理液の粘性が強く、充分に瀘過できない、【○!2】以後の増殖度が低いことなどであった。(2)培養培地:RPMI1640、HAM、IMDM、MEMの各培地に10%FCSを加えた4種の培地では細胞成長の差は見られなかった。これらの培地では線維芽細胞が癌細胞よりも有意に増殖した。無血清培地,HITES^<1)>(小細胞癌)、SCL-4^<2)>(腺癌)では線維芽細胞の増殖は抑えられたが、癌細胞生存の期間は血清培地に比べ短かった。また二重寒天培地は、線維芽細胞増殖は抑制されたが、試みた肺癌細胞については、癌細胞増殖はみられなかった。これらの培地を用いて、一週間以上の期間の系で抗癌剤感受性試験を行うのには、無理があると思われ、今後は、24から72時間での系の増殖反応の評価や、癌細胞自体の活性や分子レベルでの判定が必要と考えられる。2.肺癌の生体免疫系に及ぼす影響:Tac,YTA-1,KOLT-2抗原に関しては、転移(-)所属リンパ節に比べ、転移(+)リンパ節のリンパ球では、KOLT-2抗原の発現が増強している例があった。術前後の末梢血リンパ球相互間では、有意な変化はなかった。 現在、IL-2、YTA-1などによる増殖反応の差等を検索中である。T3、B2は、術前にくらべ術後やや低下傾向を示していた。一方、NK細胞のマ-カ-であるleu7は、悪性疾患において術後有意に増加している例が多く、良性疾患ではこの傾向は認められなかった。今後、手術根治度との相関、leullとの二重染色、Cr releasing assayを用いたNK活性の検討などを予定している。
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