研究課題
本年度内に可能ならば空気駆動式胸腔内植込み補助循環装置を臨床応用可能な状態にするのが目標であったが達成されなかった。胸腔内で駆動する際、駆動膜の動きに代る新しい指標はなく、既存の指標中一回拍出量が最もよかった。本研究の補助循環装置ト-マス型30ccモデル(TBー30)では、1回拍出量の調節は駆動圧、吸引圧等を用いて行うが吸引圧が最も影響した。臨床応用可能な状態にならなかった原因はTBー30が補助循環装置として未完成なものであったことによる。胸腔内におくこと自体はカニュ-レのデザインの変更にて可能であり、犬では左心耳脱血、上行大動脈送血とし補助循環装置は右胸腔内横隔膜上においたが最短の長さとしてカニュ-レの屈曲やカニュ-レと左心耳および上行大動脈の吻合部の閉塞を防ぐことが重要であった。犬の場合、左心耳から右胸腔内横隔膜上にカニュ-レを位置せしめることは問題ないが臨床ではこの方法は採用できない場合も考えられ、経中隔左房脱血一上行大動脈送血が実際的かも知れない。本研究では臨床応用可能な補助循環装置はえられなかったが、それは補助循環装置自体の問題が主であり、既存の臨床応用中の機種を用いれば胸腔内植込みの状態で臨床応用可能との感触をえた。不十分な結果に終ったが、多くの空気駆動式補助循環装置が体外に設置されて臨床応用されている現況に対し、胸腔内に植込むという形の研究は感染予防等の問題から必要と考えるので、今後とも本研究を継続して行く所存である。