昭和63年度に達成できた研究結果を以下に記す。 1.抗サイトケラチンモノクロナール抗体の作製とそのビオチン化 当科で樹立したヒト肺癌由来(大細胞癌)株化培養細胞からケラチン蛋白を抽出し、これをBa16/cマウスに免疫後、脾細胞を取り出し、ポリエチレングリコールの存在下に、マウスミエローマ細胞と細胞融合を行った。種々の正常組織を用いた組織切片上での酵素抗体法によりスクリーニングを行ない限界希釈法にて抗体産生細胞のクローニングを行った。以上の操作により5株の抗体産生クローンを得た。種々の腫瘍組織を用い切片上での反応性を検討した結果、2株より得られた抗体が、種々の転移性脳腫瘍(癌)組織によく反応し神経膠腫や脳原発悪性リンパ腫とは反応を示さなかった為、この両者を以後の実験に用いる事とした。又この両抗体はともに下垂体腺腫及び脈絡叢乳頭腫にも反応を示した。免疫グロブリンサブクラスの検索では両者ともにIgG_1であった。次いでELISA法に応用する為IgGのビオチン化を行った。抗体産生細胞をマウス腹腔内注射する事によって得た濃縮抗体をIgGアフィニティカラムを通して精製、ビオチン化試薬を用いてビオチン化し、G-25カラムを通してビオチン化IgGを精製した。この抗体も組織切片上での反応性は良好であった。 2.ELISA法への応用の試み 上記抗体をマイクロタイタープレートにコーティングし、免疫源として用いたケラチン蛋白、ビオチン化抗サイトケラチンモノクロナール抗体、ストレプトアビヂンアルカリフォスファターゼ、発色基質の順に加え反応させる事によって、抗源の濃度に依存した発色を得る事ができ、この系でのケラチン蛋白の定量の可能性を確認できた。
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