研究概要 |
〔抗サイトケラチンモノクロナル抗体を用いたELISA法の確立と患者髄液中での定量〕前年度に作製した抗サイトケラチンモノクロナル抗体の内、組織切片上での染色性が最もよく、かつ原発巣や組織型の異なる種々の癌組織に幅広く反応した25G抗体を用いて測定系を作製した。抗体のsubclassがIgGlである事を確認した後、抗体産制クロ-ンをマウス腹腔内に注射し濃縮抗体を得た。次いでプロティンAカラムを通してIgGを精製した。 精製IgGを10μg/wellの割合でマイクロタインタ-プレ-トに負荷し吸着させた。次いで、抗原、抗ケラチンポリクロナル抗体、ビオチン化抗ウサギγグロブリン、ストレプトアビジンアルカリフォスファタ-ゼの順に反応させ、基質液で発色後405nmで吸光度を測定した。当初、ポリクロナル抗体の代わりにビオチン化モノクロナル抗体(25G)を用いる方法を試みたが、測定感度が悪く使用を断念した。表皮ケラチン蛋白を標準抗原として上記ELISA法を施行し、50ng/mlまで測定可能な標準曲線を得た。この系にて、転移性脳腫瘍17例、原発脳腫瘍20例(神経膠腫10例、悪性リンパ腫5例、髄芽腫2例、髄膜腫2例、神経鞘腫1例)、健常者9例の髄液中ケラチン蛋白の定量を行い、転移性脳腫瘍患者5例(29%)に陽性例を認めた。一方、原発脳腫瘍20例、健常者9例では全例検出感度以下であった。又、他の中間径フィラメント蛋白であるGFAP,Neuro-filamento蛋白、Vimentin,Desminを各々2μg/wellの濃度で負荷した場合も全て測定感度以下であり、本測定系においては、他の中間径フィラメント蛋白との交叉反応は考慮する必要の無いものと考えられた。 以上の結果より、ケラチン蛋白が転移性脳腫瘍患者の髄液中マ-カ-として有用である事が示唆された。
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