下垂体摘出ラットに対し同種及び同系下垂体移植を試み、下垂体移植の可能性について検討を加えた。6週齢に傍咽頭法で下垂体を摘出した15週齢の雌Wistar-1 mamichi rat(WIR)に対し、adultの同種Fisher 344 rat(FR)または同系(WIR)下垂体を皮下あるいはラット定位脳手術装置にて脳内(視床下部、基底核)へ移植した。そして、皮下移植群は同系移植のみを行い、脳内移植群は以下の3つの実験群に分けて実験を行った。すなわち同種移植群は(1)cyclosporine(C)使用群(10mg/kg、in2週連日)、(2)C非使用群の2群に、そして同系移植群は、(3)C非使用群とした。他にsham ope群(下垂体摘出ラットに対し)を加えた。移植後1ヶ月及び9ヶ月で各群の血中ACTH濃度をRIA法で測定、またインスリン負荷を加えACTHの反応を観察した。更に体重、内分泌関連臓器重量、脳組織標本を検討した。組織標本はHE染色の他抗ACTH抗体および抗ラットプロラクチン抗体による酵素抗体染色を行い移植片の成着を観察した。〔結果〕1、血中ACTHは、同系皮下移植群、同種C非使用群(2)、及びsham ope群では何れの個体でも測定されなかった。一方同種C使用群(1)では、1ヶ月:53.8±45.2pg/ml(n=6)、9ヶ月:79.3±40.0(n=3)、また同系群(3)では、1ヶ月:48.2±20.6(n=5)、9ヶ月:62.3±15.5(n=4)とACTHが何れの個体でも有意に測定された。2、(1)群においてインスリン負荷に対しACTHの反応が観察された。3、副腎及び甲状腺の重量は(2)群のものは(1)群及び(3)群に比し有意に小さかった。4、移植した下垂体はACTHが測定された群〈(1)(3)〉において9ヶ月後も組織学的に脳内に生着しており酵素抗体法によりACTH産生細胞及びプロラクチン産生細胞が移植片内に多数同定された。
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